9月13日は「北斗の拳の日」 悪党の断末魔「ひでぶ」にはキチンとした意味があった?
バイオレンスな描写もなごませる断末魔の意外な秘密

まず、『北斗の拳』の魅力のひとつに「北斗神拳」が挙げられます。それまでの格闘マンガにはなかった「秘孔を突く」ことで「人体が破裂する」という描写は斬新で、さらにギャグに思えるほどの荒唐無稽さを原先生のリアルな絵が現実観を与え、「これならあり得る」という納得感を与えていました。この点が、ヒットの要因となります。
また、悪党の断末魔「ひでぶ」「あべし」「たわば」なども斬新でした。もちろん主人公であるケンシロウの「お前はもう死んでいる」も流行語となっています。当時の子供たちはもちろん、大人たちも口にしたことがあるのではないでしょうか。
特に有名な断末魔「ひでぶ」は原先生によると「痛え!」と、破裂するときの「ブッ!」の合成語だったそうです。しかし、この突拍子もない言葉を編集部は誤植だと思い、校正を通すのに苦労したという逸話もあります。
ちなみにアニメでは、さまざまな断末魔演技が検討されていたそうです。やがてそれは言葉遊びのようになっていったようで、ケンシロウ役の神谷明さんが「今日は後期印象派で死のう」と声優陣と打ち合わせ、悪党たちが「ゴッホ」「ゴーギャン」などと断末魔を挙げたこともありました。
このTVアニメ化にも、さまざまな苦労があったそうです。当時でも放送コードは厳しく、放送前から残酷な描写や過激な表現には規制がかけられました。そのため、シルエット処理や透過光、画面の反転などのアニメ的な演出でソフトな画面作りをしています。さらに身長180㎝台のケンシロウが小さく見えるほど敵を巨大化させ、リアリティが薄くなるよう工夫しました。
そして前述の断末魔演技もそうですが、悪党の死をどこかコミカルに描くことが、作品の残虐性を薄めてもいます。さらに、悪党は非道な行為をあらかじめ見せ、やられて当然と言う流れにしていました。
そのせいか、番組への直接のクレームはなかったようです。もっとも原作マンガに関しても編集部にクレームらしいものはほとんどなかったようなので、当時は暴力描写には寛大だったのかもしれません。正義の味方が悪党を成敗するというフォーマットは、時代劇から現代劇までドラマではよくあるパターンだったこともあるでしょう。
こうして『北斗の拳』がマンガもアニメも成功したことで、さまざまなオマージュ、パロディ、追従した作品、悪く言えば二番煎じのようなものも世に出てきました。それだけ『北斗の拳』は、これまでになかったタイプのマンガだったということでしょう。
その全収益(パチンコ・スロットの収益含む)は日本の作品ではベスト10に入るほどであり、いまだに派生のスピンオフ作品や関連商品が世に出てくるのですから、影響力はかなりのものだと思います。近年、横綱・稀勢の里が土俵入りする際の化粧まわしに本作最大の宿敵であるラオウを使い、引退の席でその最期のセリフを引用したこともありました。このような例も考えると、『北斗の拳』の影響はまだまだ続くことでしょう。
(加々美利治)












