11月3日は「手塚治虫」の生誕日 『マグマ大使』など特撮ドラマになったマンガ作品
手塚治虫の考えを変えたせたのは「ピープロ」

マグマの腹部から発射されるミサイルや爆破シーンは、アニメーションで表現されるなど、実写とアニメが合成されている点も、『マグマ大使』は印象的でした。円谷プロとはひと味違う特撮スタイルを生み出したのは、うしおそうじ氏が設立したアニメ&特撮の制作会社「ピー・プロダクション」です。
うしおそうじ氏が『マグマ大使』の実写化を申し込んだところ、原作者である手塚治虫氏は、最初は難色を示したそうです。1959年にTBS系で実写ドラマ化された『鉄腕アトム』の造形が、原作イメージとあまりにも掛け離れていたからです。実写版『鉄腕アトム』に失望し、手塚氏は自分の手でアニメ版『鉄腕アトム』に取り組んだという経緯がありました。
それでも、うしお氏は「パイロット版として、第1話だけ作らせてくれ。それを見て判断してほしい」と実写化を手塚氏になかば強引に認めさせます。うしお氏はマンガ家としての顔も持ち、手塚氏とは旧知の仲。アニメ版『鉄腕アトム』の下請けを「ピー・プロダクション」が請け負っていたこともあり、ふたりの間には深い信頼関係があったのです。放映された実写版『マグマ大使』は視聴率30%を超える人気番組となり、手塚氏は大喜びしたそうです。
その後の「ピー・プロダクション」は、特撮ドラマを中心に制作するようになり、『スペクトルマン』『怪傑ライオン丸』『電人ザボーガー』などのカルト的な人気作を放つことになります。
実写版とは異なるコミカライズ版『サンダーマスク』
特撮ドラマ好きな方なら、本多猪四郎監督らが演出で参加した『サンダーマスク』も挙げるかもしれません。こちらは手塚治虫原作ではなく、「ひとみプロ」「東洋エージェンシー(のちの創通)」によるTV企画が先行し、手塚治虫氏がコミカライズしたという珍しいケースです。
1972年~73年にTV放映された『サンダーマスク』(日本テレビ系)は、ソフト化されていないことから「幻の特撮ドラマ」と呼ばれています。実写版の全エピソードを視聴するのは現在では難しい状況ですが、コミカライズ版の『サンダーマスク』は秋田書店などで文庫化されているので、手軽に読むことが可能です。手塚治虫氏が主要キャラクターとして登場し、サンダーマスクのビジュアルデザインを考案するなど、実写版とはまったく異なるストーリーが展開されています。
全1巻で終わったコミカライズ版『サンダーマスク』ですが、主人公・命光一のラブロマンスを絡め、SFマインドにあふれた好編となっています。TV局とタイアップした企画であっても、決して手を抜こうとはしなかった手塚氏の情熱のほとばしりが感じられます。
自由と平和を愛し、文化をすすめることが、国民の祝日である「文化の日」の趣旨だそうです。手塚治虫作品を楽しむのに、ぴったりな1日ではないでしょうか。
(長野辰次)




