2月1日は「プリキュアの日」 公に語られない「タブー」は作品を守るためにあった?
あえて「しない」ことを決めてシリーズを発展させた

『プリキュア』のお約束のひとつ、それは戦い方にあります。
もともと『プリキュア』は、「女の子だって暴れたい」をキャッチコピーにして始まりました。いわゆる女性アクションヒーローものです。ところが単なるバトルもの、いわゆる男の子が好むバトルスタイルと違って厳密なルールがありました。
それは「顔を殴らない」です。お腹への攻撃もなるべく避けるなど、ダメージを受ける部分を限定していました。そのため、敵の攻撃はガードした腕などに必ず当たり、大ダメージを表現する際は壁などに激突、その衝撃で背後の壁が破壊するなどで威力を表現しています。
また、女の子ですからダメージを受けてもコスチュームがボロボロになることもなく、流血もできるだけ見せないようになっていました。またスカートの中は見せない。下から狙うようなきわどいアングルも避けています。さらにスパッツやドロワーズ、パニエなど、見られても大丈夫な衣装でガードしていました。
他にもプリキュアは数々のアイテムを使いますが、これにも工夫がされています。あくまでアイテムとして使用するので、それで直接的な攻撃はしません。たとえば弓のような武器でもエネルギーの放射に見せています。もっともエネルギー攻撃には制限がなく、ギター型のアイテムをバズーカのように使うなどありました。
このあたりは子供がプリキュアごっこをする時に重要で、何かを持って遊んだとしてもそれが打撃武器になることを避け、「光線」という見えないもので遊びが成立するわけです。『プリキュア』はバトルアニメであっても、そういった部分はライダーや戦隊よりも子供に気を遣っていました。
しかし、このタブーの数々は絶対ではありません。時代に合わせるなど、いくつかのタブーは緩和された例があります。
このタブーの方向修正に「水着」がありました。実は『プリキュア』当初はセクハラ対策の一環で水着着用が禁止された時期があります。その当時よくファンから、「プリキュアは海に行っても泳がない」「服を着たまま水遊びをする」と言われていました。
このタブーが解禁されたのが2015年放送の第12作『Go!プリンセスプリキュア』からで、当時のスタッフの英断だったと言います。それまで水着をかたくなに出さなかったことへの挑戦でした。このようにタブーを絶対不可侵として神聖化するのではなく、時代の変化に合わせて最適化していく。それもまたシリーズには重要なことです。
実は、水着は2009年放送の第6弾『フレッシュプリキュア!』第2話で登場したこともありました。この『フレッシュ』ではいくつかの「タブー破り」が行われていますが、その理由はプロデューサーの交代によるものだと考えられます。
他にも近年では味方男性キャラの戦闘参加、恋愛要素といった、これまでタブー視されてきたことにも少しずつ踏み込んできていました。よくシリーズがマンネリ化すると、何ができるかに挑戦するプラスの発想が多くあります。しかし、『プリキュア』は何かをしないマイナスの考えでコンテンツを続けてきました。どちらが正しいというわけではありませんが、シリーズを存続させるにはさまざまな工夫が重要なのでしょう。
(加々美利治)