初代ガンダムの「名ドラマ」を支えた脚本家 SFストーリーだからこそ重要な要素とは
サンライズ作品の基礎原案となった文学2作とは

日本のTVアニメーションには、昔から基本視聴者が子供という社会通念があります。それを前提として、上にご紹介した作品群が作られていた当時のサンライズ作品の企画者である「矢立肇」は、子供が共感でき、未来に夢を持てる物語として、常にふたつの基礎原案をあげていました。
児童文学でも有名な『十五少年漂流記』と豊臣秀吉の『太閤記』です。この『十五少年漂流記』型の作品を多く担当したのが星山さんだったのです。
ちょっと考えてみてください。複数人の子供たちが力を合わせて未知の大海(宇宙)で必死に生き抜いてゆく物語……『ガンダム』も『バイファム』も『ダグラム』も『蒼き流星 レイズナー』も同じだと思いませんか?
同じ原点から、こんなにも違う物語を次々と作り上げてゆく。それが監督であり、脚本家というプロのクリエイターなのです。
そんな星山さんは、実に人間味豊かな、楽しいエピソードをいっぱい持った方でした。仕事はいつも行きつけの喫茶店でなさっていた星山さん。そのせいで、長い間、娘さんから、お父さんは喫茶店に勤めていると思われていました。
また、その喫茶店が閉店するときには、まるで指定席のように愛用していた席のテーブルと椅子を譲り受け(マッチと灰皿付き)自宅に設置。「ここは俺のカトレア(喫茶店の名前)だよ」とうれしそうに笑っておられました。
個人的にも大好きな方でした。私がシナリオを書くことになったとき、町の文具屋店ではあまり見かけない0.7のシャープペン(まだワープロも一般的ではなかった時代です)が使いやすいよ、と教えてくださったのも星山さんでした。
62歳での早逝、今でも悔しくてなりません。
【著者プロフィール】
風間洋(河原よしえ)
1975年よりアニメ制作会社サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)の『勇者ライディーン』(東北新社)制作スタジオに学生バイトで所属。卒業後、正規スタッフとして『無敵超人ザンボット3』等の設定助手、『最強ロボ ダイオージャ』『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士ダンバイン』『巨神ゴーグ』等の文芸設定制作、『重戦機エルガイム』では「河原よしえ」名で脚本参加。『機甲戦記ドラグナー』『魔神英雄伝ワタル』『鎧伝 サムライトルーパー』等々の企画開発等に携わる。1989年より著述家として独立。同社作品のノベライズ、オリジナル小説、脚本、ムック関係やコラム等も手掛けている。
(風間洋(河原よしえ))