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『北斗の拳』の舞台はどこ? 世紀末世界の場所を示すわずかな情報

名作バトルマンガ『北斗の拳』では、核戦争後の世界を舞台に、ケンシロウやさまざまなキャラの戦いが描かれます。同作の「世紀末」世界は、廃墟となったビル群や荒野が広がるばかりで旧世界の面影はほとんど見られません。この記事では原作の描写をもとに、ケンシロウたちの活躍した場所を考察します。

ポスト・アポカリプスの世界に残った旧世界の残滓

初期の話にヒントが多い? 『北斗の拳 究極版』1巻(徳間書店)
初期の話にヒントが多い? 『北斗の拳 究極版』1巻(徳間書店)

 核戦争後の荒廃した世界を舞台に、漢たちの熱き戦いが描かれる『北斗の拳』には、砂漠や荒野、廃虚のビル群などが登場しますが、旧世界の面影が見当たらないため、「場所」の特定が困難です。いったいどこなのでしょうか? この記事では、原作の描写からケンシロウたちが活躍した場所を考察します。

●ケツをふく紙にもならない紙幣

『北斗の拳』の舞台の特定につながる有力なヒントは「紙幣」です。第1話で、ジードの手下のモヒカンが略奪中にアタッシュケースいっぱいの1万円札(聖徳太子が描かれている)を見つけても、少しも喜ばず「こ~~んなもんまでもってやがった」「今じゃケツをふく紙にもなりゃしねってのによぉ!」と、まき散らしていました。

 モヒカンが世界崩壊前の1万円札の価値を認識でき、なおかつ襲われた人が大事に抱えていたということは、作品の舞台が日本である可能性が高いでしょう。

●サザンクロスは東京?

 紙幣の他に、地名も舞台特定の有力な証拠になります。ただし『北斗の拳』世界では核戦争によって世界が一変してしまったためか、作中で旧世界の地名がほぼ消滅しています。ほぼ唯一の例外は、2話でバットが「KING」について話した際の、「関東一円を制圧する組織」というセリフです。

 KINGのリーダーは、南斗孤鷲拳の使い手であるシンでした。かつてケンシロウの胸に七つの傷を刻み、恋人ユリアを奪った人物です。シンがユリアのために築いた街「サザンクロス」の廃虚のビル群は、かつての東京のなれの果てなのでしょうか。

●修羅の国は中国大陸、それとも台湾島?

 ラオウを倒した後の「天帝編」では、戦いの舞台は「修羅の国」へと広がります。修羅の国とは北斗神拳発祥の地であり、ラオウ、トキ、ケンシロウの生まれ故郷です。北斗神拳は中国から伝わったと明確に描かれていること、修羅の国に行くためには「死の海」をわたる必要があることから、まず間違いなく中国だと思われます。

 しかし、この説明では腑に落ちない点もあります。それは、元斗皇拳のファルコが海に沈む夕日を身ながら死亡したことです。中国では、西に海は見えません。海から登ってくる朝日を見ることはできますが、夕日は必ず大地に沈むのです。

 これらの情報を加味すると、修羅の国とは中華文化圏の島、例えば台湾島である可能性もあり得ます。台湾海峡はもっとも狭い部分でも約130kmほどあり、台湾島から中国大陸は見えないからです。

 もっとも、その後に発表されたスピンオフ作『蒼天の拳』ではケンシロウの2代前の伝承者、霞拳志郎が上海を中心に活躍し、北斗の真の歴史が掘り下げられています。「公式」の回答としては、やはり修羅の国は中国のどこかだったと考えるのが妥当でしょう。

 ファルコが見た夕日の謎については、核爆発か地殻変動で大陸がえぐれたり、巨大な内海ができたりしていたせいなのかもしれません。『北斗』ワールドは文字通り、世界が核の炎に包まれ「海は枯れ、地は裂け」全ての生物が死滅したかのように見えた世界です。地殻変動くらい起きていても、おかしくないでしょう。

(レトロ@長谷部 耕平)

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