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【ルパン三世】宮崎駿監督の影響も…時代を反映した3つの「ルパン像」とは

時代にあわせて生まれた、3つ目のルパン像

『ルパン三世 カリオストロの城』DVD(ウォルト・ディズニー・ジャパン)
『ルパン三世 カリオストロの城』DVD(ウォルト・ディズニー・ジャパン)

 第2シリーズの人気を受けて、劇場版第1作『ルパン三世 ルパンVS複製人間』(1978年)と第2作『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)が作られましたが、『カリオストロの城』で監督を務めた宮崎駿氏は、ルパンを時代に合わせるためにその内面を再び変化させました。

 テレビ第1シリーズ後半の“面白いことに餓えている男”から、すでに贅沢や刺激は味わいつくした“枯れ気味の心優しい中年男”へと、キャラクターを成長させたのです。

 映画監督・脚本家の三宅隆太氏によれば、シリーズ作品は、前の作品・話で体験したことを踏まえてキャラクターが変化・成長するいわゆる“ストーリードラマ”と、体験や事象が次の作品・話にあまり影響しない“レギュラードラマ”に大別され、後者の“レギュラードラマ”のほうが長寿シリーズには向いているといいます。『ルパン三世』も、特にテレビ第2シリーズは後者の色が強い作品です。しかしキャラクターを生きている人間のように考える宮崎駿氏は、ルパンを成長させました。

 いまとなっては、ルパンといえば『カリオストロの城』のイメージが強いかもしれませんが、宮崎監督が描いた“自分の欲望のためでなく、少女のために戦う”というルパンのキャラクター造形は、公開当時としては異色なものだったのです。

 ちなみに『カリオストロの城』は、ジブリ作品を含む宮崎駿監督作品で唯一エンドロールに“完”が出る作品です。また、照樹務名義で演出したテレビ第2シリーズの第155話『さらば愛しのルパン』では、シリーズ最終回にもかかわらず、これまでのテレビ第2シリーズのルパンが偽物だったとも取れるような演出がなされています。こうしたことから、宮崎駿監督がいかにルパンに思い入れが強く、自身の手で幕を引こうとしていたが伝わってきます。

 視聴者が抱く一般的なルパンのイメージは、このテレビ第2シリーズ完結の時期に固まったように思います。テレビ第1シリーズにおけるハードボイルドでアンニュイなルパン、テレビ第2シリーズの明るく軽いお調子者のルパン、そして『カリオストロの城』などで宮崎駿氏が描いた、心優しい義賊としてのルパン。作品ごとにそのバランスは異なりますが、ルパンのキャラクター像は、大きく3つに分かれたベクトルによって構成されているといっていいでしょう。

 後に、こうしたルパン像そのものをテーマにしたある作品が発表され、ファンの間で論議を巻き起こすのですが、それはまた別の機会に。

(倉田雅弘)

【画像】どれだけ見てる? 多様な映像作品の「ルパン像」(13枚)

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