『鬼太郎』を裏切り続けて55年 「ねずみ男」はなぜ見捨てられないのか モデルの人物も実在?
妖怪マンガの第一人者・水木しげる先生の生誕100年を記念した劇場アニメ『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』が好評公開中です。TVアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』の第6期で「ねずみ男」を演じた古川登志夫さんも出演しています。鬼太郎をたびたび裏切ってきたねずみ男ですが、なぜ鬼太郎はねずみ男を見捨てないのか、その理由を探ってみました。
『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』にも登場(?)
「たのしいな たのしいな おばけにゃ会社も仕事も なんにもない♪」
思わず『ゲゲゲの鬼太郎』の主題歌を歌いたくなることはありませんか? 墓場で運動会に励む鬼太郎や茶碗のお風呂にのんびり浸かる目玉の親父が、楽しそうに思えてなりません。ちなみにこのフレーズは、テレビでは普段流れることのない2番の歌詞になります。
TVアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』は、1968年からフジテレビ系列で放映が始まり、現在までに第6期まで製作されています。貸本版を原作にした『墓場鬼太郎』も、フジテレビの深夜枠で2008年にオンエアされました。
2023年は原作者・水木しげる先生の生誕100年にあたることから、Netflixオリジナルアニメ『悪魔くん』が配信され、11月17日からは劇場アニメ『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』も公開中です。第6期の劇場版となる『ゲゲゲの謎』は、公開から10日間で興収5億円を突破する好調ぶりです。
目玉の親父の若き日の活躍を描いた『ゲゲゲの謎』には、鬼太郎シリーズに欠かせない名バイプレイヤー「ねずみ男」を思わせるキャラクターも登場します。公式サイトでは「あのキャラクターに似た謎の少年」と紹介されていますが、ねずみ男と思って間違いないでしょう。
お金にがめついキャラといえば、ねずみ男
ねずみ男は半妖怪で、年齢は300歳を超えています。本名は「ペケペケ」。モノクロ放送だった第1期から登場し、毎回のようにトラブルを引き起こすか、悪賢い妖怪の口車に乗って、鬼太郎を窮地に追いやります。お金にがめつく、強いものに媚びへつらう、実にえげつないキャラクターです。
何度もねずみ男に騙される鬼太郎は、その場で怒ってはみるものの、ねずみ男との交流を断つことはありません。子供の頃は「ねずみ男みたいにすぐ裏切るヤツなんか、助けなければいいのに」と思ったものですが、鬼太郎はねずみ男が危機に陥ると放っておくことができないのです。
水木しげる先生にとって、ねずみ男はいちばんのお気に入りキャラクターだったそうです。主人公である鬼太郎はシリーズが進むにつれ、正義のヒーローになっていきましたが、ねずみ男は人間以上に人間臭い存在です。ねずみ男のそんな人間臭さを、水木先生は愛していました。
臭さといえば、ねずみ男は必殺の武器を持っています。鬼太郎のようなリモコン下駄や霊毛ちゃんちゃんこではありませんが、ねずみ男の口臭や放屁は強烈さを極め、凶悪妖怪も失神させるほどです。ごくたまにですが、鬼太郎や猫娘たちのピンチを救うこともあるのです。
人間でも妖怪でもない、半妖怪のねずみ男は、したたかでなくては生きていけません。非優等生キャラのねずみ男がいることで、『ゲゲゲの鬼太郎』は長く愛され続ける人気シリーズになったのではないでしょうか。