『逆襲のシャア』あすBSで放映 何度も見た「謎多きラストシーン」 あなたはどう解釈する?
名作と呼ばれる作品は、観るたびに新しい発見があるものです。富野由悠季監督の劇場アニメ『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』は、まさに名作アニメと呼べるでしょう。一年戦争から13年後、アムロとシャアとの決着戦を描いた『逆襲のシャア』には、観る人や観るタイミングによって、いろんな解釈ができる奥深さがあります。
「宿命のライバル」アムロとシャアとの決着戦

「ニューガンダムは伊達じゃない!」
劇場アニメ『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988年)のクライマックス、宇宙世紀史上最強のパイロットであるアムロ・レイが口にする名ゼリフです。
富野由悠季監督によるオリジナルアニメ『逆襲のシャア』は、「宿命のライバル」アムロとシャア・アズナブルとの決着戦が描かれ、興収11億3000万円というスマッシュヒットを記録。ソフト化されて以降、ファンからますます愛されている人気作です。
2023年12月17日(日)のBS12では、19時からの「日曜アニメ劇場」にて『逆襲のシャア』が放映されます。結末がわかっていても、何度も観たくなる『逆襲のシャア』の魅力を探ります。
ララァを忘れられない男たちの私闘
宇宙世紀0093年。『機動戦士ガンダム』(テレビ朝日系)で描かれた一年戦争から13年後の物語として、『逆襲のシャア』は進んでいきます。地球連邦政府の腐敗ぶりに失望したシャアは、ネオ・ジオンの総帥となり、地球に小惑星アクシズを落とし、地球人類の粛清を図ります。
地球連邦軍の独立部隊「ロンド・ベル」に所属するアムロは、ν(ニュー)ガンダムに乗り、シャアの計画を阻止するために奮闘します。シャアが乗る赤いモビルスーツ・サザビーとνガンダムとの死闘が描かれるだけでなく、ブライト艦長の息子・ハサウェイや「ニュータイプ」としての資質を持つ少女・クェスらも絡み、上映時間120分のなかに密度の濃い人間ドラマが繰り広げられていきます。
一年戦争時は15歳だったアムロは28歳に、シャアは32歳になっています。すっかり大人になった両雄は、それぞれが背負ってきた人生や信条を賭けて、最後の対決に臨みます。1979年にテレビ放送が始まった『機動戦士ガンダム』を多感な思春期に観て育ったガンダム世代は、自分たちの青春そのものが総決算されるような特別な気持ちで、シャアとアムロの戦いの行方を見守ったように思います。
シャアとアムロの戦いには、個人的な感情も関係しています。一年戦争で亡くなった少女・ララァのことが、シャアもアムロも忘れることができずにいるのです。アムロはララァの夢にたびたびうなされ、シャアも寝言でララァの名前をつぶやくことが語られています。
亡くなったララァをめぐり、シャアとアムロはぶつかり合います。しかし、ふたりの戦いを観ても、かつての『機動戦士ガンダム』のような、胸の高まりは感じられません。むしろ、心の喪失感を埋めるために私闘を繰り広げる男たちが、哀れにすら感じられます。
失ったものの大切さを知ったとき、人は大人になるのかもしれません。