問題作『ルパン三世 GREEN VS RED』が追求した、「真のルパン像」とは
「本物かどうかなんて問題じゃねえ」、次元大介が語る真のルパンとは?

それでは、『GREEN VS RED』で言及される真のルパン像とはどんなものなのでしょうか。DVDブックレットに収録されているインタビューで、宮繁之監督はこう語っています。
「<ルパン三世>というのは特定個人を指すのではなく普遍的なコードネームのようなものじゃないかと僕は思ったんですよ。世界中にいろんなルパンがいて、出来のいいヤツもいれば、残念な感じのヤツもいる。でもどれが本物で、どれが偽物ということじゃなくて、とりあえずみんなルパンなんじゃないか、と。今回はそんな思いつきからスタートしてみたんです」
同作では、真のルパンになろうとする緑のヤスオと、彼の前に立ちふさがる真打ともいえる赤ルパンのほか、数多くのルパンが登場します。冒頭で万引きの醜態を晒したルパンもただ偽物と断罪されるのではなく、ルパンのイメージを構成するために発奮しているひとりの人物として描かれます。
ルパンは「作り手の個性が反映されるキャラクター」と、よく言われますが、ヤスオやルパンたちへの温かい視点は、アニメーション業界から“ドロップアウトする寸前だった”けれど『ルパン三世』に関わることで立ち直った浄園プロデューサーや、同作の数年前まで何をやってもうまくいかなくて、「1日中部屋の天井を見つめていた」という宮繁之監督の経験が反映されているのかもしれません。
作中で、ルパンの相棒である次元大介はこう言及します。「本物かどうかなんて問題じゃねえ。組んだら他のどんな奴とやるよりおもしれぇ。そういう奴のことだろ、ルパンてぇ奴は」
ルパンはルパンを求めるすべての者、面白いことを求めるすべての者、それぞれのなかにいるのです。そのルパン像はその人独自のもので、正解も不正解もない。だからこそ、「ルパン三世」は50年以上にわたって多くのクリエイターたちによって作られ続け、近年ではスピンオフ作品、実写映画、そして2019年12月公開の3DCGによる劇場版など、ますます多様化し興隆しています。これからも、面白いことを求めるクリエイターたちによって「ルパン三世」が作られていくことでしょう。
(倉田雅弘)