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続編は作らない宮崎駿、想像で語った『カリオストロの城』クラリスのその後とは

プレイステーション用ゲームとしての続編だけではない、宮崎駿監督が考えていた、『ルパン三世 カリオストロの城』をご存じでしょうか。「続き」の構想、あるいは「あの後にクラリスがどうなったのか」という想像をまとめましょう

「ルパンの娘」ならやれたかもしれない

映画『ルパン三世 カリオストロの城』場面写真 原作:モンキー・パンチ (C)TMS
映画『ルパン三世 カリオストロの城』場面写真 原作:モンキー・パンチ (C)TMS

 2025年6月27日の「金曜ロードショー」で、『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)が放送されます。こちらは宮崎駿監督の初の劇場長編アニメーション作品として知られており、一度は鑑賞している方も多いでしょう。実は40年以上愛されるこの名作に関して、宮崎監督が「その後」を想像で語ったことがありました。

●後日談的なゲームが発売されている

 宮崎監督によるアニメで、「続編」と呼べる作品はほとんどありません。強いていえば、三鷹の森ジブリ美術館限定で上映されている『となりのトトロ』の後日譚的短編『めいとこねこバス』や、こちらもジブリ美術館で2006年から上映中の『星をかった日』が、『ハウルの動く城』の前日譚または裏設定的な内容としても読み解ける、というくらいでしょう。

 また、1997年に『ルパン三世 カリオストロの城 -再会-』という、作品資料的な価値が高いとされるプレイステーション用ゲームが発売されています。「カリオストロ公国」がモニュメント・パークとして公開されるようになり、観光客として訪れたプレイヤーが「クラリス」をめぐる新たな事件に巻き込まれる、という内容です。

 さらに、宮崎監督は「これならやれるかもしれない」と語っている、自分で手掛けるルパンの物語の「続き」の構想、あるいは「あの後にクラリスがどうなったのか」という想像を、書籍『あれから4年…クラリス回想 (アニメージュ文庫 C- 4)』の中で語っています。どういう内容か、引用してみましょう。

●「ルパンの娘」ならやれるけど

『ルパン三世』のTVシリーズも手がけていた宮崎監督が、1981年の時点で自分が作る場合のルパンの物語の続きとして、「これは一生懸命やれるんですが……」と語っていたのは、「ルパンの娘を主役にした作品」でした。

 宮崎監督によれば、「本人はドロボウの娘だとは知らない」「どこかの寄宿舎にいて、ルパンはああいう親父だから、娘の前には出られない」「五ェ門は引退している」「次元は小鳥屋かなにかやっている」という設定もあったそうです。

 しかも、そのルパンの娘は「ロックなんかワアッと弾いてね、はずかしがらずに平気でバニーガールのかっこうして、空手も使うんだけど、ひとりのときは静かにバイオリン弾いているという妙な女の子(笑)」という人物だそうで、宮崎監督は「峰不二子のメイ(姪)とのコンビがいっしょに何かやったりする学園騒動をつくったらどうか」とも語っていました。しかし、「ルパンの娘っていうと、それで話が変わっちゃう(笑)」と述べており、やはり冗談まじりの提案、あるいはやりたいが実現が難しいと考えているようにも思えます。

 また、ここで宮崎監督は「自分の子どもなんかもとらわれているくだらない問題から、一歩上にトーンと脱けてしまったような女の子がいたら、気持ちいいだろうなと思う」「とにかく、何かスカッとしたものを作りたいんです」とも語っています。もしかすると、後年の『紅の豚』での快活な性格の「フィオ」などのキャラに、その想像上のルパンの娘のような「気持ちの良いヒロイン像」を意識していたところもあるのかもしれません。

●その後のクラリスは恋もする?

 ヒロインのクラリスがその後にどうなったのかについても、宮崎監督は「カリオストロ公国の娘なんですから、ふつうの女の子よりも政治・国家財政などいろいろ問題をかかえるはずです。それでもその中でくじけずにやっていくんじゃないかなって気がしてます」と語っています。

 さらに、「ルパンとは対等の関係じゃなかった」こともあって、「恋もするでしょうね。非常に能力があって尊敬もできる、自分と対等の人間とつきあおうとするはずですよ」と、新たな恋愛模様も想像しているようです。

 その一方で「ルパンのことは忘れやしないだろうとも思いますね」とのことで、「“会いたいな”と感じているだろうしね。そして、どこかしらでふたりは会うんじゃないかっていう気もする」「会ったときには、クラリスはルパンに対してベタベタした関係をたもうとはしない」「ルパンという男の限界もよくわきまえた人間に成長しているんじゃないかなあ」と、やはり宮崎駿はルパンとはもう恋仲になったり、ついて行ったりはしないことを予想していました。

●「もう1回クラリスのようなヒロインで作りたいとは思わない」理由は

 さらに、宮崎監督は「いまもう1回(『未来少年コナン』の)ラナやクラリスのようなヒロインでアニメーションを作りたいとは思いませんね」と語っています。

 それは、「クラリスやラナのようないちずな想いや強さは、だれでもが持っていると思うようになった」ことが理由であり、その上で「映画の中だけではせめて現実とはちがう、”こうなれたらいい”みたいなヒロインを描ければと思っている。その意味で、いまラナだクラリスだって作ったら、作品を作るというのではなく、ただ商品化することにしかならないでしょうね」とも述べていました。

 つまり、クラリスが持つような優しい心と強い意志は、もはや理想化されたものではなく、当然のように現実の誰もが持っているものだという意識の変化が宮崎監督にあったのです。『カリオストロの城』の続編となるアニメは作られませんでしたが、そういった気付きがあったからこそ、その後の作品で「こうなれたらいいな」と思える、魅力的なヒロインを描けたといえそうです。

※宮崎駿監督の崎は「たつさき」が正式表記

(ヒナタカ)

【画像】え…っ? 「もう20歳超えてるよね?」「キレイ系に」 こちらが『カリオストロの城』4年後のクラリスです

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