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駅伝シーズンに読み返したい『奈緒子』 「タスキ」が日本人の心を揺さぶる?

陸上経験者・綾野剛の見事なピッチ。映画版『奈緒子』

映画『奈緒子』DVD(日活)
映画『奈緒子』DVD(日活)

 2008年には上野樹里、三浦春馬、笑福亭鶴瓶らのキャストによって、実写映画『奈緒子』として劇場公開されています。波切島の誇る天才ランナー・雄介(三浦春馬)と、雄介の父親の事故死に関わった東京の女子高生・奈緒子(上野樹里)との葛藤と和解を軸にした青春ドラマでした。原作では雄介の中学時代のエピソードが、映画では高校生になってからのものにアレンジされています。

 映画版『奈緒子』のいちばんの見どころは、やはり駅伝シーンです。全国大会出場を目指す雄介たちの前に、ライバル校のエース・黒田(綾野剛)が立ちはだかります。黒田役の綾野剛はまだブレイク前でしたが、中学・高校時代は地元の岐阜県では屈指の中距離ランナーとして鳴らしていただけに、素晴らしい走りを見せてくれます。綾野剛が安定したピッチで走ることによって、三浦春馬のがむしゃらぶりを際立たせています。

 上野樹里はコメディドラマ『のだめカンタービレ』(フジテレビ系)で大人気を博した直後ですが、『奈緒子』ではナイーブな女子高生役を好演。新人時代に出演した実話系映画『チルソクの夏』(2004年)でも陸上選手を演じており、なかなかの走りっぷりを見せています。美しい走りは、観ている人の心まで高揚させてしまうようです。

マラソンへと続く「タスキ」に込めた想い

『奈緒子 新たなる疾風』第1巻(小学館)
『奈緒子 新たなる疾風』第1巻(小学館)

 原作コミックは2001年からタイトルを『奈緒子 新たなる疾風』と変え、雄介は駅伝からマラソンへと転向することになります。高校生ながら健介は、オリンピック代表の選考会を兼ねた「東京国際マラソン」に初出場。42.195kmというこれまで体験したことのない長距離に苦戦を強いられますが、駅伝で一緒に汗を流したチームメイトやゴールで待つ奈緒子たちのことを想い、百戦錬磨の国内外のランナーたちを相手にデッドヒートを繰り広げるのでした。

 東京国際マラソンで激走した雄介は、2004年のアテネ五輪の男子マラソン代表に選ばれ、世界的ランナーへとはばたいていきます。五輪へのジャンピングボードとして駅伝を提唱した金栗四三の長年の夢を、駅伝出身の雄介が見事に叶えることになります。

「東京オリンピック2020」の男子マラソンに出場が内定している中村匠吾選手(駒澤大学卒)と服部勇馬選手(東洋大学卒)、2時間5分50秒というマラソン日本記録保持者である大迫傑選手(早稲田大学卒)も、やはり学生駅伝で活躍しています。今回の箱根駅伝からも、将来の五輪ランナーが頭角をあらわすことになるかもしれません。出場校20校のそれぞれのシンボルカラーが施された「タスキ」は、どんなドラマを生み出すのでしょうか。

(長野辰次)

【画像】いよいよ100年目の箱根駅伝、ドラマ予感させるCM映像(6枚)

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