「流血以上にきつい場面が…」「原作の解像度上がる」 衝撃の「R指定」実写化映画
賛否が生まれがちなマンガ作品の実写化で、特に過激な青年マンガの映像化は表現に困る要素も多いでしょう。しかし、なかには原作の再現度が高く評価されている作品もあります。
思春期真っ只中の主人公たちのベッドシーンはどう描かれるのか?
暴力シーンや性描写、重い展開など、さまざまな理由で映倫からR指定にされる映画のなかには、マンガの実写化作品もあります。そもそも過激だった原作をどのように映像化したのか、衝撃的な内容かつ原作の再現度が高く話題になった作品を見てみましょう。
●『うみべの女の子』(R15+)
2021年公開の映画『うみべの女の子』は2009年より「マンガ・エロティクス・エフ」で連載が開始された、浅野いにお先生による同名マンガが原作です。
同作は思いを寄せる先輩にフラれた佐藤小梅と、彼女に思いを寄せ身体の関係を持つ磯部恵介の、繊細で残酷な「恋」と「性」を題材とした青春群像劇です。関係を続けるうちに磯部への思いを募らせていく小梅と、徐々に心が離れていく磯部のすれ違っていくふたりの姿も胸が苦しくなるほど生々しく描かれています。
タイトル通り海辺の雰囲気も相まった叙情的な作品ですが、ストーリーの核が「性描写」であり、設定上は中学生同士でのベッドシーンが描かれるため、発表時は実写化を不安視する声もありました。
主人公の小梅役と磯辺役は原作者の浅野先生も参加したオーディションにより、それぞれ石川瑠華さん(撮影当時22歳)と青木柚さん(当時19歳)の若手演技派のふたりが選出されます。
心配されていた性描写は、石川さんと青木さんのまさに身体を張った大胆な演技で、原作どおりのベッドシーンがリアルに再現されました。また、登場人物がそれぞれ抱える心の闇や思春期ならではの不安定な心理描写も、実力派のキャスト陣により丁寧に表現され、高い評価を得ています。
ネット上では、「映画を見たほうが原作の解像度も上がった」「ちゃんと中学生のように見える役者さんの演技力がすごい」などといわれていました。実際に石川さんは「シネマライフ」のインタビューで「中学生っぽい服を買って、撮影の前の期間に着ていたりしました」と述べており、役作りへの高い意識もうかがえます。
●『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(R15+)
『ボーイズ・オン・ザ・ラン』は花沢健吾先生による同名マンガが原作で、2010年に実写映画化、2012年にTVドラマ化されています。
同作の主人公は、人生が上手くいかず、鬱窟とした日々を送る営業マンの田西敏行です。好きな女性の妄想に浸り、テレクラで誕生日を迎える「等身大のダメ男」である田西が、仕事や恋愛、ボクシングを通し成長していく物語でした。
田西が思いを寄せる同僚の植村ちはるが、ライバル会社の営業マンの青山に奪われるNTR展開や、青山が妊娠したちはるを捨て、結果彼女が中絶することになるなどの胸糞展開も印象的です。同作の実写映画化が発表された際、原作の田西のリアルなダメ男加減を再現すると「相当キモくなるのではないか?」と心配するファンもいました。
映画本編を見ると、田西役の峯田和伸さんのダメ男を体現したような見た目や行動の痛々しさが際立ちます。またちはる役を演じた黒川芽以さんの親しみやすさや、かわいさ、そして「悪女ヒロイン」ともいわれるズルさもあるちはるを、忠実に表現する演技力が話題となりました。
峯田さんは公開時「シネマカフェ」のインタビューにて、田西を演じるにあたり原作のキャラを意識せず、その場の空気感を大切にしていたことを語っています。
ネット上では、「峯田さんの演じる主人公が本当にダサいのにその倍かっこよくて最高だった」「泥臭くて報われない感じがよかった」など、キャラの魅力が原作に忠実に再現されたことで高い評価を得ていました。
峯田さんが「等身大のダメ男」を演じ切ったからこそ、不器用ながら真っすぐな男の田西が魅力的なキャラとなり、観客の心をつかんだのでしょう。また、最初は田西に協力してくれる悪役の青山を演じた松田龍平さんの演技も、「かっこよさとクズさ両方完璧に表現してた」「マジでむかつく」「嫌だけど自分がヒロインなら青山になびく気がしちゃうくらいのバランス」と絶賛されています。