「今?」「だいぶ印象変わる」 実写化が好評だった小説のアニメ化が増えた理由は?
原作やかつての実写版とは違う魅力を放つアニメ版

そして、『時をかける少女』と同じくかつての角川映画のアニメ化である『ぼくらの7日間戦争』は、かなり大胆なアレンジを施しています。原作及び実写映画では、中学生たちが厳しすぎる校則を敷く大人たちへ抵抗し、廃工場に立てこもるという内容で、子供たちが戦う相手は管理教育の象徴である教師たちです。
一方、2019年のアニメ版では、主人公たちを高校生へと変更しています。しかも、原作の世界と地続きの世界として描かれ、原作の出来事があった30年後を舞台としていました。
そして、彼らを取り巻く環境には現代的な要素が大きく反映されています。地方の衰退と東京の一極集中、不法移民の少年との出会い、炭鉱に立てこもる主人公たちに襲い掛かる台風という自然災害、現代の子供たちが向き合わなければいけないのは教師だけではなく、多くのものと戦わないといけないことを上手く反映しています。
また、『ジョゼと虎と魚たち』はもともと原作が短編小説のため、長編映画にするにはエピソードを追加する必要があり、映像作品の作り手たちがいかに膨らましていくかによって大きく変わっています。本作は車椅子に乗った女性がヒロインの作品で、ポイントとなるのは障害者の描き方です。実写映画では性的な描写と障害者への差別的な要素が描かれる作品な一方、アニメ映画版はそうした差別要素が薄まり、ふたりの純愛と前向きに夢を追いかける姿を描いた内容となっています。
これは、明確に時代の変化が反映されていると思われます。障害者差別は現代にもまだ根強く残りますが、実写映画が制作された2000年代前半は今よりも強かったのでしょう。2020年のアニメ映画版は、障害者でも健常者同様に夢を見る存在として描かれます。実写映画版は良くも悪くも障害をベースにした恋愛劇だったのですが、アニメ版は障害者を特別視せずに、よりフラットな目線で描こうと試みていると言えます。
「障害者.com」では、映像作家のMXU氏が本作を「障害を純愛ストーリーを盛り上げるための手段にせず、真正面から障害者差別の本質に向き合っている」と評価していました。全体的に前向きな作品になっているのは、時代の変化を反映していると言えるでしょう。また、ジョゼが絵を描く才能を持った存在で、絵から生まれる想像力をアニメならではの方法でファンタジックに描いたシーンなどは、アニメならではの醍醐味も感じさせます。
『池袋ウエストゲートパーク』に関しては、むしろかつての実写ドラマ版が原作小説を大きくアレンジしており、TVアニメ版は原作とドラマ版、どちらの魅力も取り込もうとした内容と言えます。実写版で窪塚洋介さんが演じたキングはアニメでは内山昂輝さんが演じており、その性格の違いが話題になっていますが、これはどちらかいうとアニメ版の方が原作に近いです。ただ、実写版のシリーズ構成も参考にしている節があり、窪塚さんがサプライズ出演するなど、実写版のファンも意識していると思われる内容です。
また、『富豪刑事』は、現代のアニメファンの嗜好に合わせて、大人の男性キャラクターの「バディもの」となっています。主人公のひとり、加藤春はオリジナルのキャラクターで、金で解決しようとする神戸大助のやり方に反発する設定です。
熱血漢で全うな正義感を持つ加藤と、違法スレスレな手段も辞さず金で何でも解決してしまう冷血漢の神戸という、好対照なふたりが反目しあいながらもコンビで事件を解決していく構成で、シリーズ全体を引っぱっていく内容となっています。
また、原作小説は70年代に発表されているので、時代に合わせてアニメ版の富豪の描写にも変化が見られました。アニメではAIやドローンなど、最新のガジェットが登場し、現代の富豪を表現しています。ちなみに2005年の実写ドラマ版では、主人公は深田恭子さん演じる女性になっていました。性格はわりとおっとりしていて、これは原作の主人公に近い設定です。
まだ詳細は不明の『がんばっていきまっしょい』については、現在公開されているあらすじを読む限り、やはり原作とも実写映画とも異なる物語になっていると思われます。公式サイトの掲載されたキャラクターたちも、原作には登場しない人物です。原作とのつながりなどは不明ですが、こちらもやはり現代的なアレンジを加えてくるのではないでしょうか。
こうした企画群の魅力は、原作や実写版との比較や、解釈やアレンジによって作品は別の輝きが生まれるところです。やり方が千差万別で、そのまま再現するばかりが選択肢ではないと思わせてくれるこうした作品は、忠実さが求められるマンガ原作のアニメとは違った楽しみ方ができるという点で、貴重なものと言えるでしょう。
(杉本穂高)




