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「原作者が苦言」はなぜ? ジブリ『ゲド戦記』は何が問題だったのか

原作者が発表した怒りのメッセージ

『影との戦い ゲド戦記』文庫版1巻(岩波書店)
『影との戦い ゲド戦記』文庫版1巻(岩波書店)

 2006年8月アメリカでル=グウィン氏のために試写会が開かれます。宮崎吾朗監督と対面して感想を求められたル=グウィン氏は、「It is not my book. It is your film. It is a good film. (これは私の本ではない。あなたの映画であり、良い映画です)」と答えたそうです(「ゲド戦記監督日誌」2006年8月7日)。

 そして同月、ル=グウィン氏は日本のファンからの質問に答える形で、公式ホームページに映画『ゲド戦記』についての感想を記しました。

「本の著者に『どうしてあの映画は……』と質問してもむだです。著者も『どうして?』と思っているのですから」というまえがきから始まる文章は、かなり辛辣なものです。

 まず、これまでの経過について、ル=グウィン氏は、交渉時には宮崎駿監督が責任を持つと言っていたのに実際には制作にまったくタッチしていないこと、「引退するつもり」だから息子にこの作品を作らせたいと述べていたのに結局引退しないで次回作を制作していたことに、怒りと失望を露わにしています。

 作品自体については「全体としては、美しい映画です」と認めながら、『トトロ』のような細密な正確さも『千と千尋』のような豊かなディテールもないとして、登場人物たちによる暴力も原作の精神に大きく背くものだと指摘しています。

 さらにストーリーの統一性と一貫性のなさ、作品の掲げるメッセージに疑問を呈し、全体的な説教臭さ、「父殺し」の意味不明さ、さらには悪役「クモ」を倒して終わることによって物語が解決してしまう単純さを批判していました。

 ル=グウィン氏は、原作と映画は異なるものだと承知しつつも、「同じ題名を冠した、40年にわたって刊行の続いている本を原作にしたと称するからには、その登場人物や物語全体に対して、ある程度の忠実さを期待するのは当然ではないでしょうか」「本だけでなく、読者をも軽視するこのやり方は、疑問に思います」と記しています。

 その後、ル=グウィン氏は2018年に逝去しました。鈴木敏夫プロデューサーの著書『天才の思考 宮崎駿と高畑勲』(文春新書/2019年)や責任編集した『スタジオジブリ物語』(集英社新書/2023年)にも『ゲド戦記』の項がありますが、交渉については詳述されているものの、ル=グウィン氏による反応については触れられていません。

(大山くまお)

【画像】え…っ? 知ってた? これが宮崎駿監督が『ゲド戦記』から影響を受けて描き、ジブリ版に影響を与えた作品です(3枚)

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