「おっぱいロボ」ってなんやねん!? なぜ昔のアニメの巨大ロボは性的特徴があったのか
『機動武闘伝Gガンダム』と『ガン×ソード』の女性型ロボ革命
その後、TVアニメにおけるおっぱいロボの登場は1991年に放送がスタートした『ゲッターロボ號』の「ゲッター翔」まで待つことになります。
これまでは主役ロボに対するサポートロボの位置づけでしたが、本作では「3機のマシンが3形態のロボットに変形・合体」するうちの1形態ということで、れっきとした主役ロボです。旧「ゲッター2」からドリルを引き継ぎつつ(アニメ版は旧『ゲッターロボ』と物語的な関係はナシ)空中戦に強く、頼もしい戦力となっています。
パイロットの「橘翔」は女性であり、ロボットの「性別」も合わせた格好です。しかし、劇中では翔の兄「信一」が戦死していなければ信一が操縦していたはずとの描写もあり、それはそれで観たかった気がします。
続く女性型巨大ロボは、1994年より放送された『機動武闘伝Gガンダム』の「ノーベルガンダム」でしょう。世界各国の「ガンダム」が大量に出てきたなか、ネオスウェーデン代表の「アレンビー・ビアズリー」が操縦する機体です。史上初の「セーラー服を着た(模した)ガンダム」として、視聴者は「セーラーガンダム」と呼ぶこともありました。
主役でこそないものの、2代目主役ロボの「ゴッドガンダム」と互角の戦いを繰り広げ、しかも隠し球で国際条約違反の「バーサーカーシステム」を搭載し、一時は圧倒する場面もあったほどの強さです。
ノーベルガンダムが女性型であることは、ビームリボンやビームフラフープを駆使するなど、新体操の女性選手のようなしなやかな動きをすることに必然性がありました。セーラー服の視覚的なインパクトと、巨大ロボットのアクションに新たな要素を持ち込むという、画期的な発明となったのです。
その数年後、『ガン×ソード』に登場した「ブラウニー」に、ノーベルガンダムを重ね合わせた人たちも少なくないでしょう。ネコミミを生やした女性型フォルムを持ち、肘についたスパイクや尻尾の先端にある機関銃などの武装で、アクロバティックな動きで敵を翻弄します。
ノーベルガンダムもブラウニーも女性パイロットであり、ぴっちりしたレオタード風のスーツを装着し、その動きの通りにロボットが操縦できるトレース型でした。「強いヒロインとロボットを同時に魅せる」という意味で、女性型ロボットが到達した究極の形のひとつなのです。
そして両ロボとも、胸部の膨らみは控えめになっており、もはや「おっぱいロボ」とは呼びにくくなっています。女性型ロボットが性的な表現に頼らずに済むというか、「人機一体」的に人間ヒロインのアクションと同時に描けるようになった結果なのでしょう。
●『勇気爆発バーンブレイバーン』は性的巨大ロボの究極形
この時期の女性型巨大ロボは、『勇者王ガオガイガーFINAL』(OVA版は2000年から2003年発売。後にTVシリーズ『勇者王ガオガイガーFINAL GRAND GLORIOUS GATHERING』に再編集)の「光竜」と「闇竜」あたりが、おそらくひとつの節目となります。
2体とも胸の自己主張が強めであり、合体した「天竜神」も豪勢に盛り上がっています。「ガオガイガー」本編に出ていた「氷竜」「炎竜」の準同型ロボであり、基本設計は同じのため、ビジュアル的に差別化を図ったのでしょう。
その後は巨大ロボットから性的な要素はほぼ消滅し、「おっぱいロボ」もとんと見かけなくなりました。このままセクシャルな巨大ロボは消えていくのか……と思いきや(特撮では『烈車戦隊トッキュウジャー』の「トッキュウオー」が股間に列車をそそり立たせたこともありましたが)、今年の『勇気爆発バーンブレイバーン』では違う方向で性的なアツさがさく裂しました。
何しろ巨大ロボ自らが男性パイロットを全裸にひんむいたり「イサミを受け入れるということは、全てを受け入れるということ。イサミが操縦桿を上下に動かす度、私も上下する」など思わせぶりどころではないセリフを連発したのです。ロボットのデザインに性的な要素はひとつもないのに、性的なロボットはここまで進化したと感動もひとしおでした。
(多根清史)