『ガンダム』最大の謎「ミデア」! なぜフツーの輸送機が激戦地を2度も突破できた?
一年戦争時の兵器は鈍足か航続距離がゼロ、そのすき間を縫ったミデア

偉業達成の理由のひとつは、「一年戦争時のMSや艦船、兵器は基本的に鈍足だから」でしょう。
たとえばホワイトベースは、英ベルファストを出てから(第27話「女スパイ潜入」)ジャブローに入港するまで(第29話「ジャブローに散る!」)約1週間かかっており、現代の旅客機よりもはるかに遅いペースです。すごい技術のミノフスキークラフトで巨体を浮かせてはいるものの、重力下での速度は海を走る艦船と大差ないようです。
一方のジオン軍はといえば、ガルマが特攻したことでおなじみの「ガウ級攻撃空母」が最大マッハ0.9は出るものの、総生産数は40機ほどしかありません。それほど貴重な機体をたかが輸送機ひとつの追跡に回せるわけもなく、また割り当てられたとして小回りも効かず、たちまち振り切られるでしょう。
かたや戦闘機の「ドップ」は最高速度マッハ5の俊足ぶりですが、母艦となるガウとセットで運用されています。つまり燃費が悪く、母艦からあまり遠くに行けないということでしょう。胴体からキャビンが持ち上がっているという、航空力学を完全に無視した形状を、高出力エンジンで力づくで飛ばしていればそうもなります。
このように、艦船タイプは足が遅く、空母タイプは圧倒的に物量が足りず、戦闘機はジオンが重力に不慣れなためか「足は速いが航続距離がほとんどゼロ」ということで、「普通」のミデアにもかいくぐれるすき間がポッカリと空いていたわけです。
理由その2は、「ミノフスキー粒子」のためにレーダーが無効化されていたことでしょう。
「宇宙世紀」の根本に関わることですが、地球連邦軍もジオン軍も宇宙や地球を問わずミノフスキー粒子を撒きまくっています。「ブライト」艦長の「ミノフスキー粒子、戦闘濃度散布!」というセリフを何回聞いたことでしょう。
ミノフスキー粒子には、遠距離の通信ができなくなる/レーダーが使用不能になる/ミサイルなどを遠隔誘導できなくなる、といった効果があります。
「レーダーが使えて遠くの敵が捕捉でき、ミサイルを誘導できる」あるいは「レーダーで捕らえた敵影を遠くの味方に知らせられる」のであれば、「MS同士が互いに見える距離で撃ち合ったり殴り合ったりする」状況はできようがありません。つまり「ミノフスキー粒子」は、ロボットアニメの都合……もとい、資源に乏しいジオンが、連邦軍の豊富な従来兵器をガラクタにして、MSを主力とした自らの土俵に引きずり込む決定打となりました。
高濃度のミノフスキー粒子のもとでは、連邦軍とジオン軍ともに相手を目視できる距離で戦うほかありません。開戦の口火となった「ルウム戦役」での両軍の砲撃戦は28kmといわれ、これは第2次世界大戦の海戦とほぼ同じです。旧日本軍の戦艦「大和」も、約20kmから30kmの距離で放たれた自らの射撃に耐えられるよう設計されていました。
「地球連邦に比べ、我がジオンの国力は30分の1」というギレンの演説を信じるなら、ジオン軍の兵力は非常に乏しく、広大な北米や中央アジアを実効支配したところで、レーダーなしに隅々にまで目が届くわけがありません。「ザクが艦船を落としに行く」を実現したミノフスキー粒子が、そのまま「ジオン支配地域の防空網をスカスカ」にしたと考えられます。
ジオン軍が地球に不慣れで「大気圏内で速度も航続距離も優れた」機体を作らなかったこと×レーダー無効化+ジオンに兵なし(兵力不足)のため、防空網はザルとなり、そのおかげでミデアも大いに活用される余地ができたのでしょう。『機動戦士Zガンダム』で「アムロ」が「アッシマー」にぶつけた普通の輸送機も、長い目で見ればミデアと同じく、ミノフスキー粒子のおかげで生き残れていたのかもしれません。
(多根清史)



