「ときメモ」一番人気はなぜヤンデレに奪われた? メインヒロイン像の変遷を読み解く
「王道」を乗り越えた先にヤンデレの星・大倉都子あり

さて『3』のメインヒロイン「牧原優紀子」は、ゲーム本編の方向性を象徴している存在です。
本作が「ときメモ」ブランドを従来のコア層から一般客層へと広げる狙いは、投資信託「ゲームファンド ときめきメモリアル」の一部から開発資金を得ていたことからも明らかでした。そのためか、初代や『2』に見られたような、「お約束」的造形のキャラはほぼいなくなり、性格もシナリオも現実味を増しています。
ゲーム表現的に最も大きな変更点は、前作までの2D(静止画)から3Dのトゥーンレンダリング技術に移行したことです。手を振り上げたり、もじもじしたり、フルアニメーションによる自然な動きが魅力となるはずでした。
が、まだ初期の技術だったこともあり、プレイヤーの目が動きに慣れるまで時間が掛かりました。また顔の造形がどのキャラもほぼ同じに見える上に、ひとりずつモーションを付ける作業が大変だったためか、攻略対象となるキャラが(隠しを含めて)8人という、シリーズ最小の人数となっています。
牧原優紀子は、ルックス的にも性格的にも飛び抜けたところがありません。その上、現実的なあり方にこだわったためか、「幼なじみ」という最強のカードを手放してしまいました。
そうした結果が、コナミ公式の人気投票で8人中7位に甘んじたことに現れています。『3』の方針転換を一身に背負い、その重さに押し潰された悲劇のヒロインではないでしょうか。
2024年現在シリーズ最終作である『4』は、「星川真希」と「皐月優」のダブル・メインヒロインです。そこは、パッケージにもふたりが並んでいるので議論の余地がありません。
星川は「親しみやすくて攻略もしやすい」ということで『2』の陽ノ下光枠、皐月は「最高の難度を誇る」=「藤崎詩織の後継者」に位置づけられます。『4』は前作が革新的すぎた反省のためか、舞台を1作目の「きらめき高校」に、ゲームシステムも『2』のようなシンプルさに戻し、全般に原点回帰の印象があります。
そこで人気をかっさらったのが、伏兵というべき「大倉都子(みやこ)」でした。ゲーム進行上は、主人公にほかの女の子たちの情報を教える、初代の「早乙女好雄」的なポジションです。が、メインのふたりにない「主人公の幼なじみ」属性を持っているためか、発売前から高い人気を集めていました。
さらにゲームの発売後、実は攻略可能キャラだと判明します。そこまでは半ば想定内ですが、デートを重ねると好感度が上がっていくはずが、主人公のとある言葉で大きく傷つき、闇キャラへと変貌します。
お弁当には主人公の嫌いなものばかり詰め込んできて、残すことも許しません。そのような恐ろしい言動にもめげずにデートを繰り返すと、デレデレ期が到来します。愛が深いほど闇も深く、長いトンネルを抜けた後の光はまぶしくもあり、プレイヤーたちは都子を攻略するのではなく「攻略されてしまった」のでした。
大倉都子は、当時の数年前にブームだった「ヤンデレ」と呼ばれがちです。が、厳密にはヤンデレは「主人公には底知れぬ愛を降り注ぎ、周囲には害を与える」存在のはずであり、「主人公だけにつらく当たる」都子はそれに当たらないのではないでしょうか。
むしろ、メインヒロインが「王道」に戻ったからこそ、今まで見たことがないストーリー展開、それでいて「幼なじみ」という懐かしい概念へと着地したことに衝撃が走ったのでしょう。都子が真のメインヒロインとも呼ばれるのは、星川と皐月のおかげでもあり、ひいては開発サイドがプレイヤーの心の機微に寄り添ったからと考えます。
「ときメモ」もシリーズ作品の例に漏れず、常に古参ファンに配慮する「保守」とユーザー層を広げようとする「革新」の板挟みとなり続けています。『3』の牧原優紀子と『4』の大倉都子は、その振れ幅の激しさを示しているのです。
(多根清史)




