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「あんな辱めを…」『Zガンダム』“男性の道具”として扱われることに絶望したレコア・ロンドの悲劇

数々の女性キャラクターが活躍する『機動戦士Zガンダム』で、「裏切り」という要素もあり、一部ファンから批判の対象となりがちなレコア・ロンド。しかし、なぜレコアはエゥーゴを裏切らざるを得なかったのでしょうか。

女性の苦しみを代弁していた?

カードダス「ガンダムデュエルカンパニー」より「レコア・ロンド」(バンダイ) (C)創通・サンライズ
カードダス「ガンダムデュエルカンパニー」より「レコア・ロンド」(バンダイ) (C)創通・サンライズ

『機動戦士ガンダム』の続編『機動戦士Zガンダム』(以下、Zガンダム)が放送されたのは1985年、この年は日本で男女雇用機会均等法が制定された年です。

 そのことが意識されたのかどうかは分かりませんが、『Zガンダム』は、1作目と比べて女性キャラクターの活躍が増えています。1作目ではモビルスーツに乗って戦うのは男性キャラクターが大半でしたが、『Zガンダム』では多数の女性キャラクターが搭乗し、戦場で男性同様に戦う姿が描かれるようになっています。

『Zガンダム』のなかでは、「ハマーン・カーン」など敵側の女性キャラクターも強烈な印象を残しますが、主人公側のキャラクターとして、時に比較されながら言及されるのが主人公サイドと敵側を行き来することになるふたりの女性パイロット、「エマ・シーン」と「レコア・ロンド」です。ともに所属していた組織を抜け、敵対する側となるという共通項を持ちながら、ファンの間で評価が対照的なこのふたり。レコアは特に批判の対象となることが多いようです。

 しかし、いま本作を見直してみると、1985年当時の女性が抱えていた苦しさを代弁する存在だったのかもと思わせる要素があることに気付かされます。そして、それは現代にもなお残っている何かかもしれません。そこで、本稿ではレコア・ロンドという女性キャラクターについて考えてみたいと思います。

●徐々に不安定になっていくレコア

『Zガンダム』は連邦とジオン軍の「一年戦争」後、地球連邦軍内に発生したふたつの勢力「エゥーゴ」と「ティターンズ」の争いを中心に描かれます。レコアはエゥーゴの士官として登場、物語の序盤では思春期の年頃で不安定な「カミーユ・ビダン」の保護役のような立場として振舞います。

「クワトロ・バジーナ(シャア・アズナブル)」とも懇意の関係にあり、エゥーゴ戦艦「アーガマ」搭乗の士官で、また数少ない女性搭乗員として、それなりのポジションにいたと思われます。

 そこに、ティターンズの非道を目の当たりにしたエマが、エゥーゴへ転属してきます。モビルスーツのパイロットとして優秀なうえ、軍人として強い信念を持つエマの登場によって、彼女の存在は徐々にエゥーゴ内で、また物語のなかでもやや希薄になっていきます。

 その後、彼女は敵基地であるジャブローに潜入するという危険な任務に就くことになります。しかし敵に捕まってしまい、ともに捕らえられた「カイ・シデン」の発言「あんな辱めを……」というセリフから、女性として屈辱的な目にあわされた可能性が示唆されることになります。

 レコアは当初は冷静で理知的なキャラクターとして登場したものの、この一件を境に少しずつ不安定になっていきます。

 好んで危険な任務に就くようになり、敵であるティターンズのシロッコに惹かれだし、最終的にはティターンズに寝返ることになるのです。

 その理由をレコアは具体的には言いません。「魂が傷ついていたのに、アーガマではそれに気付く男がいなかった」など、ごく個人的な理由を語るにとどまります。このあたりが、ティターンズの非道を許せず軍人としての信念でエゥーゴへと転身したエマと対照的な部分だと語られることが多いと思われます。

 そして、逡巡はしながらも、自分を慕っていたカミーユたちとも敵対することになり、暴力的な上官に押し切られる形で毒ガス攻撃の指揮をとらされることになります。この時、まだティターンズに寝返ったばかりでありスパイの疑いも持たれていて、上官から「スパイがどういう目にあうと思うか」のような言葉での脅迫にかなりレコアは動揺しているように見受けられます。「辱め」のトラウマが蘇っているのかもしれません。

 最終的には、エマと対峙する形で「男たちは戦いばかりで女を道具として使うことしか思いつかない、もしくは辱めることしか知らない」と言い残して戦死することになります。

【画像】 えっ、エゥーゴの制服けしからんな…エマさんら魅惑ボディな「ガンダム美少女ヒロイン」を見る(7枚)

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