ファミコン時代に消えた幻の『聖剣伝説』 開発中止の理由に「ディスクシステム」があった?
開発中のゲームが世に出ず、打ち切られることもあります。そんな発売が中止されたタイトルのなかには、スクウェア・エニックスの名シリーズを連想されるものもありました。果たして、昭和時代に「生まれなかった」作品とは。
『聖剣伝説』という名のRPGが告知された昭和時代

ゲーム開発にかかる制作費や開発期間は年を追うごとにかさむ一方ですが、昔の方が開発が楽だったというわけではありません。注力して制作したにもかかわらず、さまざまな要因によって発売されることなく開発中止となることも日常茶飯事でした。そうして埋もれた作品のなかには、多くのゲームファンにとって聞き覚えがあるであろう、「聖剣伝説」と呼ばれたタイトルもあったのです。
●幻の『聖剣伝説』は、ファミコン・ディスクシステム向けの予定だった
ゲームファンにとって「聖剣伝説」といえば、スクウェア・エニックスのアクションRPGを思い浮かべる人も多いことでしょう。
シリーズ第1作目の『聖剣伝説 〜ファイナルファンタジー外伝〜』は、合併前のスクウェア時代にリリースされた作品で、ゲームボーイソフトながら本格的なアクションRPGが楽しめると好評を博しました。
その人気ぶりを受けてシリーズ展開も始まり、2024年には完全新作『聖剣伝説 VISIONS of MANA』も登場し、こちらも大きな話題に。1作目が発売された1991年からいまに至るまで、34年も愛され続けている名シリーズです。
しかし、ゲームボーイ向けに登場した1作目よりもさらに遡るファミコン時代に、スクウェアが開発を断念したディスクシステム向けの『聖剣伝説』が存在しました。
●全5部作だった『聖剣伝説 THE EMERGENCE OF EXCALIBUR』の壮大な世界
ファミコンの周辺機器であるディスクシステム向けのゲームとして作られていた『聖剣伝説』の正式名称は、『聖剣伝説 THE EMERGENCE OF EXCALIBUR』(以下、聖剣 TEOE)。当初は『エクスカリバー(仮称)』として発表され、後にこのタイトルに変更されました。
この『聖剣 TEOE』は、現在展開している「聖剣伝説」シリーズのプロローグや序章……といった関連性はまったくなく、実はタイトル名が被っているだけで、完全に別の作品です。ジャンルも『聖剣 TEOE』はRPG、「聖剣伝説」シリーズはアクションRPGと、ゲーム性の共通点もありません。
また『聖剣 TEOE』はかなり注力して作られていたようで、構想は最終的に全5部作にまで拡大し、4人パーティ制で仲間になる人数は20人と大ボリュームです。その壮大さに期待感が高まったものの、残念ながら開発は打ち切られ、幻のゲームとなりました。
●『聖剣 TEOE』開発中止の理由とは
「ファイナルファンタジー」の生みの親としても知られ、当時スクウェアに在籍していた坂口博信さんが、2016年に行われたトークイベント「黒川塾(四十)」にて、『聖剣 TEOE』開発中止の理由を述べています。
坂口さん曰く、「ディスクシステムでやるには企画が大き過ぎた」「開発が無限ループにハマってしまい、完成しない状態になってしまった」とのこと。構想の大きさに、時代が追い付かなかった模様です。
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その構想こそ立ち消えてしまいましたが、タイトルだけでも現在の「聖剣伝説」シリーズに受け継がれたのは、せめてもの幸運だったのかもしれません。
(臥待)