『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』物語を成立させる喫煙という「薄い絆」
中年男性と若い女性の交流を描くマンガ『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』は、「キャラ」「喫煙」という要素によって成立している物語といえるでしょう。喫煙おじさんのロマンはいかにして妄想の域から昇華しているのか、というお話。
マンガ『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』に抱くおじさんのロマン

マンガ『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』(地主/スクウェア・エニックス「月刊ビッグガンガン」連載中)は、ブラック企業に勤めるおじさんとスーパーの若い女性店員が喫煙所で交流するという、一風変わった作品です。この物語は、私こと筆者を含めたおじさん喫煙者ならつい憧れてしまう、若い異性との忌憚のないやりとりが描かれています。そこで、この物語に抱くおじさんのロマンを考察(妄想)します。
物語のかいつまみ
仕事に疲弊する喫煙者の中年男性「佐々木」が、仕事終わりに癒しを貰っていたのは、スーパーSの清楚かわいい系女性店員「山田」の接客でした。佐々木はあえて山田が担当するレジに並び会計するほどのファンです。ある日ひょんなことから、スーパーの女性店員で後ろに髪をくくりロックスタイルに身を包んだ喫煙者「田山」が、店の喫煙所に佐々木を誘ったことからふたりの交流が始まります。その田山というのが、見た目を少し変えた山田なのですが、佐々木は一向に気付かず仲良くなっていきます。
……という、いわゆる日常系のお話しです。私も喫煙中年であるため佐々木に感情移入してしまうわけで、その何にロマンを感じてしまうかというと、下心とはちょっと違う、喫煙者がもつ「うしろめたさの共感」と「喫煙所という秘密基地感」、および「世代が離れた若者との交流」が淡い憧れを抱かせてくれるのです。
そして佐々木と田山(山田)のキャラクターも憧れを加速させる要素があります。
田山24歳、あざとさと興味の狭間
清楚系の山田は、お客さんにダルがらみされ辟易していました。しかし佐々木が山田に抱く「接客に元気を貰っているだけ」という好意を知った山田こと田山は、佐々木に興味をもち、心を許していきます。
そんな田山は、並んで座れる椅子があるスーパーの喫煙所で、自分の足で佐々木の足をたぐり寄せてみたり、タバコをくわえたまま火を貰おうと顔を近づけてみたり、上着を着せてあげたりと、いたずら心のあざと行為で佐々木を動揺させます。そこには、多少の好意も含まれるのでしょうが、佐々木が見せる狼狽や恥ずかしそうにしているのを見て楽しみ、田山側も「癒し」を得ているようです。
一般のおじさんである私であれば、ホビーにされていることに気づかず勘違いし口説いてみたり(後に当然のように轟沈)、逆に恐怖を感じその喫煙所には近づかないといった陰キャマインドを発揮してしまったりするところです。しかし佐々木の所作は異なります。以下で解説しますが、その鈍感さと誠実さが田山には刺さり、それを欲するように田山は毎回、あざとムーブを繰り出していくのです。