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「破壊衝動」にあふれていた昭和の特撮 「国会議事堂」崩壊で拍手喝采も?

特撮映画や特撮ドラマでは、怪獣がミニチュアの街を破壊するシーンに、子供たちが歓声をあげました。子供たちの「破壊衝動」をくすぐるものが、昭和時代の特撮には多かったように思います。苦労してミニチュアを作り上げた製作者に聞くと「壊されないと、逆にがっかりする」とのことでした。特撮における破壊シーンについて振り返ります。

製作費5億3000万円を投じた高倉健主演映画

1975年公開の映画『新幹線大爆破』Blu-ray(東映)
1975年公開の映画『新幹線大爆破』Blu-ray(東映)

 草彅剛さんが主演、樋口真嗣監督によるNetflix映画『新幹線大爆破』が、2025年4月23日から配信が始まりました。オリジナルとなるのは、高倉健さん主演、佐藤純彌監督の劇場映画『新幹線大爆破』(1975年)です。東映が当時としては破格となる、製作費5億3000万円を投じたサスペンス大作のリメイクになります。

 オリジナル版『新幹線大爆破』は、時速80キロ以下に減速すると車両に取り付けられた爆弾が自動的に爆発するというスリリングな脚本の面白さが特筆されます。犯人役を高倉健さん、運転手を千葉真一さん、不測の事態に対応する運転指令長を宇津井健さん、という豪華キャストも話題を呼びました。

 設定が斬新過ぎたのか、公開当時の日本では興収が伸び悩みましたが、海外では高い評価を受けました。減速すると爆発するというノンストップな設定は、キアヌ・リーブス主演のハリウッド映画『スピード』(1994年)や『名探偵コナン 時計じかけの摩天楼』(1997年)などに踏襲されています。樋口監督、草彅さんにとっても、オリジナル版は忘れられない作品だそうです。

狙われた「高度経済成長のシンボル」

 安全性と利便性にすぐれた新幹線という高度なインフラが、テロリストに狙われるという発想が何よりも新鮮でした。1964年に開業した新幹線は、いわば「高度経済成長のシンボル」です。その新幹線を標的にしてしまおうという過激な企画は、実録ヤクザ映画『仁義なき戦い』(1973年)で人気を博していた東映ならではのものでしょう。

 刺激的なタイトルと内容ゆえに、国鉄(現在のJR)は東映の製作には協力せず、上映の中止さえ要請しています。国鉄に協力を断られたため、東映はミニチュアなどの特撮技術を用いることで、新幹線が並走するシーン、さらには爆破するシーンを撮り上げています。シュノーケルカメラを使った映像が、特撮シーンでは効果的に使われています。

 特撮スタッフには、『ウルトラマン』『ウルトラセブン』(TBS系)の美術監督を務めた成田亨氏が参加していました。ウルトラマンや怪獣のデザインで知られる成田氏ですが、東宝の特撮映画『ゴジラ』(1954年)でゴジラが壊す街のミニチュアづくりから特撮のキャリアをスタートさせています。

 円谷プロから独立した成田氏の特撮技術も、オリジナル版『新幹線大爆破』の注目ポイントのひとつです。オリジナル版もNetflix、U-NEXTなどで配信されているので、新旧2作を見比べて観るのも面白いでしょう。

【画像】えっ、こんなもんじゃない? これが怪獣たちに壊された日本の建築物たちです(6枚)

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