『花ざかりの君たちへ』は「イケメンパラダイス」じゃなかった! 原作と異なる平成ドラマ3選
作品が実写化される際、ファンが気になるのは、雰囲気がどれだけ忠実に再現されているかどうかでしょう。近年では、多くの実写化作品が原作の世界観を再現し、高く評価されています。しかし、少し時代をさかのぼると、原作とはまるで別物のような大胆なアレンジが施された作品も少なくありませんでした。
人気学園ドラマの原作はまさかのバッドエンド?

2000年から2010年にかけての10年間、いわゆるゼロ年代は名作ドラマの宝庫でした。特にマンガや小説を原作とした実写化作品が次々と話題をさらい、今なお語り継がれる名作も少なくありません。そしてのちに「原作改変」と呼ばれるような大胆なアレンジが加えられていた作品でも、軒並みヒットしていたのは、この時代ならではの特徴といえるでしょう。
2007年に放送され、空前のイケメンブームを巻き起こしたドラマ『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』も、そのひとつです。本作は日本中のイケメンが集まる全寮制男子校「桜咲学園」を舞台にした学園ラブコメディで、主演の堀北真希さんをはじめ、小栗旬さんや生田斗真さん、水嶋ヒロさんら豪華キャストが勢ぞろいしたことでも話題を呼びました。
2025年6月1日からは「TVer」での無料配信がスタートし、改めて注目を集めていますが、実のところ原作コミックには「イケメンだらけの男子校」という設定は存在せず、ドラマ版のような副題「イケメン♂パラダイス」も付けられていません。
また、キャラクター設定にも数々の違いがあり、例えば生田斗真さんが演じた「中津秀一」は、原作では関西弁を話すキャラクターでしたが、ドラマでは標準語に変更されています。このように随所に原作との相違点が見られるため、放送当時は戸惑った原作ファンも少なくありませんでした。
今年で放送から20年を迎えたドラマ『野ブタ。をプロデュース』も、原作に大胆なアレンジを加えた作品のひとつです。本作は2005年に放送された学園ドラマで、クラスの人気者「桐谷修二(演:亀梨和也)」が同級生の「草野彰(演:山下智久)」とともに、いじめられっ子の転校生「小谷信子(演:堀北真希)」、通称「野ブタ」を人気者にプロデュースしていくというストーリーでした。
特に修二と彰のコンビは、ドラマ内外で大きな話題を呼び、期間限定ユニットとしてリリースされた『青春アミーゴ』は100万枚超えの大ヒットに。視聴者の間でも「修二派か、彰派か」で盛り上がるなど、社会現象的な人気を博しました。
ところが白岩玄氏による原作小説には、そもそも「彰」というキャラクターは登場せず、野ブタも「小谷信太」という男子生徒として描かれています。なかでも印象が大きく異なるのが物語の結末で、原作では、他人を見下していた修二がその本性を暴かれて孤立し、最後には転校してしまうという、ある種のバッドエンドを迎えました。
対してドラマ版でも修二は一度孤立するものの、それがきっかけで野ブタたちとの友情がさらに深まり、修二の転校も前向きな旅立ちとして描かれています。原作とのあまりのギャップに、「えっ、こんな話だったの!?」と驚いた人も多かったのではないでしょうか?
原作と異なる実写化ドラマといえば、2002年放送の『ロング・ラブレター~漂流教室』も忘れてはなりません。原作は「ホラーマンガの神様」として知られる楳図かずお先生の『漂流教室』ですが、物語の設定は大きく変更されています。
まず、どちらも「学校ごと未来世界にタイムスリップしてしまう」という導入こそ共通していますが、原作では小学生たちが極限状態のなかで生き延びようとする過酷なサバイバル劇が描かれていました。一方ドラマ版は、舞台が高校に変更されているほか、教師の「浅海暁生(演:窪塚洋介)」と元教師「三崎結花(演:常盤貴子)」のふたりを中心に物語が進行します。
また原作の見どころであったショッキングな描写は抑えられ、代わりに主人公ふたりのラブストーリーが中心に描かれます。原作の怖さを活かしつつ、極限状況のなかで希望を見出していくヒューマンドラマ色の強い作品となっていました。物語のテイストは大きく異なるものの、「原作とは別物として楽しめた」という声も多く、いまなお「傑作」と語られる作品のひとつです。
(ハララ書房)