『龍馬伝』最終回は大河史上、最も残酷? 歴代の暗殺シーンとの決定的な違い
幕末、志半ばで暗殺された坂本龍馬の最期には諸説あります。歴史的偉人の生涯を描くNHKの大河ドラマは、史実をもとに制作されますが、実は作品ごとに龍馬の最期の描かれ方が少しずつ異なっているようです。特に福山雅治さん主演の『龍馬伝』は、あまりにも印象的でした。
15年前のストーリーが鮮明に思い出される

坂本龍馬は、日本史を語るうえで欠かせない偉人のひとりで、幕末を主題としたドラマでは必ずといっていいほどスポットが当たります。壮絶な最期を迎えたことでも知られており、15年前に放送された大河ドラマ『龍馬伝』では、その最終回が「残酷すぎる」と話題になりました。
2010年に放送された本作は、NHK大河ドラマの第49作目です。龍馬の幼少期から、33歳で暗殺されるまでの怒涛の生涯を描いた作品で、主演を福山雅治さんが務めたほか、岩崎弥太郎役の香川照之さん、岡田以蔵役の佐藤健さんなど、脇を固める豪華なキャスト陣も注目を集めました。
倒幕をめぐって敵味方の思惑が交錯する張り詰めたストーリーや、映画のようなリアリティを追求した映像美が高く評価され、視聴者のなかには「『龍馬伝』が1番好き」「大河の最高傑作」と称賛する声も少なくありません。また福山さんの演技も好評で、2010年度のギャラクシー賞ではテレビ部門個人賞を受賞しています。
福山さん演じる龍馬は、おおらかで人たらしな性格。それでいて困っている人を見捨てない、まさにヒーローのような存在です。それだけに暗殺されると分かりながら見る最終話は、多くの視聴者にとってつらく悲しいものだったでしょう。さらに、その暗殺シーンが歴代の大河ドラマでも、群を抜いて凄惨だったことがより一層の衝撃を与えました。
最終話では、幕府の手先である見廻組が龍馬を襲撃します。混戦のなか、何度も龍馬を斬りつける音が響き、その額からは血が流れます。そして最後には、倒れた龍馬の腹部に男が全体重をかけた刀をズブズブと突き立てるという壮絶な描写が続きました。
ちなみに当時の視聴者を絶望させたのは、残酷な暗殺シーンだけではありません。実はこの緊迫のクライマックスシーンの最中に、タイミング悪く選挙速報のテロップが流れてしまったのです。よりにもよって最大の見せ場で起きたこの事件は、今もなおネット上で語り草となっています。
『龍馬伝』の最終回は多くの人にとって残酷な印象を残しました。では、ほかの大河ドラマでは龍馬の暗殺シーンをどのように描いてきたのでしょうか? 2000年以降の作品に絞ってみていきます。
まず2004年放送の大河ドラマ『新選組!』では、江口洋介さん演じる龍馬が背中を斬られた後、頭部にとどめの一撃を受けるという、計2回の斬撃で描かれました。
一方2008年放送の『篤姫』では、玉木宏さん演じる龍馬がまず額に一撃を受け、続いて背中を大きく斬られ、その場に崩れ落ちます。さらに2018年の『西郷どん』では、小栗旬さん演じる龍馬が頭部を2度斬られて絶命する描写となっていました。
このようにいずれも2回程度の斬撃にとどまっており、腹部に刃を突き立てる描写があるのは『龍馬伝』だけです。本作がとりわけ残酷と受け取られたのも無理はありません。
なお史実においても、暗殺の経緯には諸説あり、ほかの大河ドラマのように前頭部と背中に致命傷を負ったとされる説もあれば、『龍馬伝』のように腹部を斬られたという説も存在します。
なかでも後者は、実行犯とされる今井信郎の証言に基づくものです。1900年(明治33年)に発表された「近畿評論」などには、まず龍馬の頭部にひと太刀を浴びせた後、腹部を続けて斬りつけたといった描写が見られます。こうした史実を踏まえると、『龍馬伝』における暗殺シーンこそ最も忠実に再現されたものなのかもしれませんね。
(ハララ書房)
