金ロー『もののけ姫』エボシ御前の衝撃的な過去! 身売り→夫殺害の壮絶人生
映画『もののけ姫』クライマックスの災厄に関わる重要キャラ「エボシ御前」は、作中で語られていない壮絶な「裏設定」がありました。このことを知ると、また映画を見て考えさせられるかもしれません。
タタラ場を率いる女性リーダーの「真の姿」

2025年8月29日(金)の「金曜ロードショー」で、スタジオジブリの名作『もののけ姫』が放送されます。物語のなかで複雑な立ち位置を持つエボシ御前は、彼女が作り上げた集落「タタラ場」を襲う大災厄のきっかけを作った人物ですが、作中では語られていない壮絶な過去がありました。
エボシ御前は冷静沈着で頭脳明晰な美女であり、身売りされた女性たちや社会的弱者に生きる場所を与える優しさを持ちながら、同時に自分たちの生活のためには神をも殺すという強さを持つ人物です。
主人公のアシタカが呪いを受けるきっかけとなった「ナゴの守」を「タタリ神」へと変えたのも、エボシ御前でした。単なる勧善懲悪ではない複雑なテーマをもった『もののけ姫』のなかで、エボシ御前は善悪の境界線上に立つキャラクターといえます。
エボシ御前のモデルは伝説の美女「立烏帽子」

宮崎駿監督の著書『折り返し点』における、歴史学者・網野善彦氏との対談によれば、エボシ御前のモデルは「立烏帽子」という伝説上の絶世の美女だったことが明かされています。「鈴鹿御前」とも呼ばれるこの女性は、現在の三重県の鈴鹿山に棲んでいたとされています。
亀山市歴史博物館のサイトによれば、立烏帽子は「鈴鹿山にあらわれた女の山賊で、大変美しい人であった」「鈴鹿山の山賊のかしらである悪路王の妻」だったとのこと。さらに「天皇の命令で立烏帽子を退治にきた坂上田村麻呂のことが好きになり、悪路王をうちとるときに手を貸した」という、夫を裏切る強かな一面も持っていたようです。
浦谷年良氏の著書『「もののけ姫」はこうして生まれた。』のなかで、宮崎監督はエボシ御前について「辛苦の過去から抜け出した女性」と表現しています。実は彼女自身も、タタラ場の女性たちと同じように「身売りされた過去」があったのです。
さらに驚くべきことに、海外に売られたエボシ御前は倭寇(わこう)の頭目の妻になります。倭寇とは、13世紀から16世紀にかけて東アジア地域を荒らした海賊たちのこと。エボシ御前は次第に頭角を表し、最終的には夫である頭目を殺して、金品と石火矢(鉄砲)の技術を手に入れて日本に持ち帰ったというのです。
終盤、モロの君に右腕を噛みちぎられながらも生き残ったエボシ御前が「みんなはじめからやり直しだ。ここをいい村にしよう」と語るシーンには、深い意味があります。
宮崎監督は、プロデューサーの鈴木敏夫氏が「ああいう神を神とも思わぬ近代合理主義者は宿命として死ぬべきだ」と考えていたにもかかわらず、エボシ御前を生き残らせることを選びました。その理由について「生き残る方が大変だと思っているもんですから」と語っています。
身売りされた過去から強くなり、他の弱者を守るために立ち上がったエボシ御前の背景にあった壮絶な人生を想像してみると、『もののけ姫』の物語に対して新たな見方ができるかもしれません。
(マグミクス編集部)

