キャラクターショーは誰のもの? トラブル続出で「撮影禁止」も… 「撮り鉄問題」にも通じる観覧マナー
昔からデパートや遊園地などで行われていた、着ぐるみによる「キャラクターショー」は近年、観覧ルールがきわめて細分化されています。どうして、こんなことになったのでしょうか?
観客側によるトラブルは「想定外」が多い? 対応の難しさ

目の前でアニメや特撮作品のキャラクターの着ぐるみが活躍する「キャラクターショー」。「アトラク(アトラクションショー)」や「ヒーローショー」とも呼ばれています。古くは1960年代から始まっていました。
実は筆者も10年ほど前まではキャラクターショーの舞台に立っていたことがあります。もっとも遊園地のような大きな舞台でなく、商業施設のような場所で行われる小規模のものでした。こういった現場では人手が足りないことも多々あるので、本職だけでなく副業やバイトに近い形で参加する人も少なくありません。
もっとも見に来てくれた観客のみなさん、特に子供たちの期待は裏切れないので誰もが本気で取り組みます。片手間でやれば思わぬケガのもとともなるので、みんな真剣でした。それでもトラブルというものは起きるものです。
筆者が経験したものでは、音響関係のトラブルがもっとも大変でした。急にスピーカーから音が出なくなることや、ショーで使う音源テープのデータが消えてすべてアドリブになったこともあります。
幸いなことに筆者は大きな衣装トラブルを経験したことはありませんが、衣装が壊れること、現地に持って行くのを忘れることなどは「業界あるある」でした。しかし、もっとも想定外のトラブルは見に来てくれた「観客」の方に起因することです。
観客側の思わぬ行動がショーの進行を妨げ、最悪の場合は中止になる可能性だってあります。近年ではショーの開始前からいくつかの禁止事項や注意事項を発表することも多く、大きなショーでは特にそれを守っていただくことが最低限のマナーでしょう。
もっとも、そうした「お約束」があるにも関わらず、守らない人が後を絶ちません。どうして決められたルールやマナーを守れない人がいるのでしょうか。
「禁止事項」が山盛りのショーも… 一部の大人の行為がファン全体に影響

観客側のトラブルであっても、子供の起こす問題は些細なことだと思います。ヤンチャな子供も少なくないので、筆者も観客に近い位置に立った時に背後から蹴られたり叩かれたりすることがありました。こうした子供のイタズラは演じてる方としては仕方ないと割り切っている人がほとんどでしょう。
それとは反対に、大人が起こすトラブルというものは、ほとんどが「想定外」で頭を悩ますことになります。
あくまでも筆者の経験だけで話すと、握手会の際に女性キャラに抱きつくという人がいました。もちろん即座に引き離して厳重注意をします。しかし、他の観客の人に不快な思いをさせぬよう、警察に連絡するといったことはしませんでした。
こういったあからさまな迷惑行為はそれほどあるものではありませんが、常態化して困ってしまうケースは、「舞台最前列に陣取って撮影をする人」かもしれません。一見、大きな問題には思えませんが、大人の身体で子供たちの視線をふさぐことになるので、大人であるならばモラルをもって考えてほしい案件でしょうか。
近年ではこういったことへの対策として、「ショーの最中の撮影、録音、録画を禁止」と明文化したキャラクターショーもあります。また「親子優先エリアの設置」や、「子供連れでない大人の観覧禁止」の措置をとるショーもあると聞きました。
つまり、大人のファンに向けて、観覧マナーのようなものが求められているわけです。もしも、こういった迷惑行為が続くようなら、さらなる厳しいルールが設けられるかもしれません。それは運営側にとっても、できれば避けたいことでしょう。
こうした話を聞くと、筆者はまったく関係ない趣味の人たちのことが頭に浮かびました。鉄道撮影を趣味にするファン、通称「撮り鉄」の人たちです。彼らも、「一部の迷惑行為をする人たち」によってマイナスイメージで語られることが多くなっています。
もちろん、撮り鉄と呼ばれる人たちの多くはルールを守る人たちですが、一部のマナー違反者の迷惑行為が、それを凌駕する印象があるのでしょう。キャラクターショーもそのようになってしまわないよう、ショーを楽しんでいる大人たちには良識ある行動が求められているのかもしれません。
(加々美利治)