『ばけばけ』ヘブンの「左目失明」の理由は明かされる? 小泉八雲、学生時代の衝撃体験とは
連続テレビ小説『ばけばけ』では、レフカダ・ヘブンが、「目の異常」にまつわる問題で感情をあらわにするようです。
遊びの最中に悲劇が

2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は『知られぬ日本の面影』『怪談』などの名作文学を残した小泉八雲(パトリック・ラフカディオ・ハーン)さんと、彼を支え、さまざまな怪談を語った妻の小泉セツさんがモデルの物語です。本作の第5週では、ついに主人公「松野トキ(演:高石あかり)」の未来の夫「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」と出会いました。
放送予定の第24話のあらすじを見ると、トキはヘブンと徐々に交流を深めていくそうです。しかし、ヘブンが滞在する花田旅館の女中「ウメ(演:野内まる)」の「目の腫れ」が原因で、ヘブンの態度が一変すると説明されています。
ヘブンが他人の目の異常に過剰に反応するのは、彼が左目を失明しているからでしょう。ヘブンのモデル、ラフカディオ・ハーンさんは、1890年8月に松江に着いてからしばらく滞在していた冨田旅館の女中だったお信さんが、たびたび目の不調を訴えているのを見て、自ら彼女を眼科に連れて行ったという記録があります。また、ハーンさんは主人の太平さんがお信さんの眼病に無頓着だったことに怒り、冨田旅館からの転居を決めたそうです。
ハーンさんは生涯にわたってこの見えない左目を気にしていたようで、現存する彼の写真の多くは左目が写らないように、右側から撮られています。いくつかある集合写真でも、ハーンさんは正面を向いていません。
ハーンさんは16歳のときに、「事故」で左目の視力を失ったそうです。幼い頃に両親と別れて、大叔母のサラ・ブレナンさんのもとで孤独に暮らしていたハーンさんは、この左目の失明によってさらに人付き合いが苦手となり、女性に対しても奥手になっていたともいわれています。また、ハーンさんは、もともと近視だった右目を酷使し、机にかじりつくように近づいて執筆をするようになりました。
ハーンさんの人生に大きな影響を与えた、左目を失明するほどの事故とは、どのようなものだったのでしょうか。
その事故は、ハーンさんがイギリスのダラム市郊外にあったカトリックの全寮制の神学校、アショウ・セント・カスパード・カレッジに在籍していたときに起きました。ハーンさんは友だちと「The Giant’s Stride(ジャイアンツ・ストライド)」という遊びをしている最中、縄の先端が目に当たって失明してしまったといいます。そのとき縄を当ててしまったのは、ハーンさんが最も親しい友人のひとりだったそうです。
ジャイアンツ・ストライドがどんな遊びなのか調べてみると、3~4mほどの回転するポールに縄を括り付け、その縄の先端にある取っ手にぶら下がってぐるぐる回る、というものでした。安全性の低い回転ブランコのようなものと思われます。おそらく親友が使っていた遊具の縄が、ハーンさんの目に当たってしまったのでしょう。回転によって、かなり勢いがついていたのかもしれません。
ハーンさんが左目を失った事故は、映像で描くとかなり痛そうです。『ばけばけ』でも、そのうちヘブンが失明した理由が語られると思われますが、どのように描写されるのでしょうか。
※高石あかりさんの「高」は「はしごだか」
参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(著:長谷川洋二/潮出版社)、『小泉八雲 ラフカディオ・ヘルン』(著:田部隆次/中央公論新社)
(マグミクス編集部)
