次週『ばけばけ』女中になりたいトキは「腕が太い」からヘブンに怒られる? 史実で小泉セツさんが言われたこととは
連続テレビ小説『ばけばけ』第6週では、トキがレフカダ・ヘブンの女中になることを決意しました。しかし、7週目の31話ではヘブンのほうから断られてしまうそうです。一体何があったのでしょうか。
せっかく女中になると決めたのに

2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は『知られぬ日本の面影』『怪談』などの名作文学を残した小泉八雲(パトリック・ラフカディオ・ハーン)さんと、彼を支え、さまざまな怪談を語った妻の小泉セツさんがモデルの物語です。
第6週30話の最後では、主人公「松野トキ(演:高石あかり)」が、未来の夫「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」の女中になる決意をしました。しかし、予告されている第7週31話のあらすじを見ると、彼女はヘブンから拒絶されてしまうようです。
※ここから先の記事では『ばけばけ』のネタバレにつながる情報に触れています。
31話のあらすじには
「ヘブンの女中になる決意をした、トキ。錦織(演:吉沢亮)の立ち会いの元、トキはヘブンに女中になる挨拶をするのだが、まさかのヘブンに断られてしまう。困惑するトキと錦織に、ヘブンは『アナタ、ブシムスメ、チガウ!』と怒りをあらわにする。なんとか誤解をとき女中となることが認められたトキだったが、家族には言えるわけもなく、花田旅館で働くことになったと告げる。」
と書かれています。なぜ、ヘブンはトキのことを、武士の娘ではないと思ってしまったのでしょうか。これには、モデルの小泉セツさんとラフカディオ・ハーンさんの逸話が関係しているのかもしれません。
第4週16話に、ある印象的なシーンがありました。同話では、今は亡き借金取りの「森山善太郎(演:岩谷健司)」が、松野家にやってきてトキに「次来たときは、織子で鍛えたその太い腕引っ張って、遊郭に連れていくけんのぉ!」と失礼な発言をし、トキや家族たちを怒らせています。
セツさんは、養父の稲垣金十郎さんが商売に失敗して作った借金のせいで、11歳の時から実父・小泉湊さんの機織りの会社で懸命に働いていました。そのため、彼女の手足はかなり太くなっていたそうです。
そしてセツさんは1891年2月上旬頃、ハーンさんの家で、住み込みの女中として働きはじめました。ハーンさんは女中としてやってくるのは旧士族の娘だと聞いていたようで、セツさんのたくましい手足を見て「士族の娘ではない」「百姓の娘だ」と怒ったそうです。彼のイメージとしては、武家の娘は華奢な女性だったのでしょう。
ただ、その誤解は解けたようで、ハーンさんはセツさんと1891年の夏に結婚しました(法的に婚姻関係となったのは1896年)。1893年に生まれた、ふたりの長男・小泉一雄さんの著書『父小泉八雲』には
「父は初めの頃、母の手を見て、その荒れているのを傷ましがり、気恥しがるその皸(あかぎれ)のされた手を父は自分の白い柔い掌でさすりつつ『あなたは貞実なひとです。この手その証拠(しるし)です』と云って労った事を母は屡々(しばしば)語っている」
「後年、父もまた私へ、これに言及した事がある。ママの手足の太いのは少女時代から盛んに機を織った為だ、即ち親孝行だからだと」
という記述があります。
ヘブンも最初はトキの腕の太さに怒ると思われますが、、それは今後むしろ「好きな部分」になるのかもしれません。
※高石あかりさんの「高」は「はしごだか」
参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(著:長谷川洋二/潮出版社)、『セツと八雲』(著:小泉凡/朝日新聞出版)、『父小泉八雲』(著:小泉一雄/小山書店)
(マグミクス編集部)
