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朝ドラ『エール』で注目の古関裕而氏が作曲、『モスラの歌』の背景にあった戦争体験

「モスラの歌」を生み出した南方体験

2003年の映画『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』でも、劇中で「モスラの歌」が歌われている。画像は同作DVD(東宝)
2003年の映画『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』でも、劇中で「モスラの歌」が歌われている。画像は同作DVD(東宝)

 東宝の怪獣映画というと、伊福部昭氏が作曲した『ゴジラ』(1954年)のテーマ曲も有名です。『ゴジラ』のテーマ曲が非常に重々しい印象を与えるのに対し、古関氏が作曲した「モスラの歌」はとてもファンタジックで、どこか温かみを感じさせます。とても対照的です。

 巨大な蛾の怪獣であるモスラの出身地・インファント島は、南方にある孤島という設定です。古関氏は福島出身ですが、人気作曲家だったことから戦時中はたびたび戦地への慰問を要請され、中国、台湾、シンガポール、ミャンマー、マレーシア、タイ、ベトナムなどを回っています。「露営の歌」などの国威発揚歌も作曲した古関氏は、自分が作った歌に見送られながら多くの兵隊たちが出征し、戦場で散っていったことに深い自責の念を覚えたそうです。古関氏自身も戦争末期に徴兵されています。

 小美人が歌う「モスラの歌」には、日本人が南方に抱く楽園のイメージと同時に、平和への願いが込められています。作詞を担当した関沢氏、本多監督も戦地からの帰還兵でした。古関氏らの戦争体験が投影された歌だと言えそうです。

『モスラ』が後世に与えた影響

 古関氏が作曲した「モスラの歌」は、その後も続編『モスラ対ゴジラ』(1964年)などに受け継がれていきます。『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(2003年)では、10代のころの長澤まさみさん、大塚ちひろさんが小美人に扮し、「モスラの歌」を歌っているのにも注目です。

 東映動画(現・東映アニメーション)に勤めていたアニメーション作家・宮崎駿監督も、『モスラ』を劇場で観て、強い影響を受けています。宮崎監督のオリジナル監督作『風の谷のナウシカ』(1984年)に登場する王蟲(オーム)は、モスラの幼虫によく似ています。また、モスラが守るインファント島は、核実験による放射能汚染から免れたという設定になっていました。エコロジーの大切さを問う『風の谷のナウシカ』と繋がるものを感じさせます。

 現在、ドラマ『エール』はこれまでの放送分の再放送となっていますが、新作エピソードでは古関夫妻をモデルにした古山裕一(窪田正孝)と妻の音(二階堂ふみ)が戦争体験を経て、傷ついた人びとの心を音楽の力で勇気づけようと、新しい時代の音楽に向き合うことになるようです。映画『モスラ』の舞台裏が、どのように描かれるのか楽しみです。

(長野辰次)

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