朝ドラ『エール』で注目の古関裕而氏が作曲、『モスラの歌』の背景にあった戦争体験
NHK連続テレビ小説『エール』の主人公のモデルとなった作曲家・古関裕而氏は、幅広い音楽ジャンルで活躍し、アニメや特撮映画にも影響を与えています。なかでも有名なのが、映画『モスラ』で歌われる「モスラの歌」です。
生涯に5000曲を作曲、「六甲おろし」や甲子園大会の歌も
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作曲家・古関裕而氏とその妻・金子さんをモデルにした、NHK連続テレビ小説『エール』が放送中です。古関氏は早稲田大学の応援歌「紺碧の空」や、阪神タイガースの応援歌「六甲おろし」など、多くの人に親しまれている曲を数多く作曲しました。生涯に5000曲以上もの曲を手掛けたと言われています。
夏の甲子園大会歌「栄冠は君に輝く」も、古関氏の作曲です。また、スポーツ関連の応援歌だけでなく、1952年~1954年にオンエアされたNHKラジオドラマ『君の名は』の主題歌、さらには生放送中の伴奏も担当するなど、ドラマの分野でも大活躍しています。
日本初の長編アニメとして知られている『桃太郎 海の神兵』(1944年)の音楽も、古関氏が手掛けています。動物たちが「あいうえおの歌」を歌うシーンはミュージカルタッチになっており、若き日の漫画家・手塚治虫氏は大変な感銘を受けたそうです。
エキゾチックなメロディ「モスラの歌」
古関氏が手掛けた映画音楽で、今なお多くのファンに記憶されているのが、怪獣映画『モスラ』(1961年)で歌われる「モスラの歌」です。非常にエキゾチックなメロディで、ザ・ピーナッツがデュエットする「モスラヤ モスラ ドゥンガン カヤクサン インドゥムゥ」という不思議な歌詞は、一度耳にすると忘れることができません。
この歌詞は脚本家の関沢新一氏、本多猪四郎監督、田中友幸プロデューサーの共作によるもの。インファント島の守り神であるモスラに祈りを捧げる日本語の歌詞を、インドネシアからの留学生にインドネシア語に翻訳してもらったそうです。「モスラよ 永遠の生命 モスラよ(中略)我らを守れ 平和を守れ 平和こそは永遠につづく 繁栄の道」という内容です。決して、デタラメな言葉を口にしているわけではありません。
ザ・ピーナッツが扮した小美人は、インファント島の調査隊の前に現われ、高い金属音を発します。人間には聞き取れない小美人のこの声は、古関氏がハモンドオルガンを演奏して表現したものです。古関氏は『モスラ』の演出面にも深く関わっていたことが、うかがえます。