ガンダムの初期企画は「宇宙刑事」ぽかった? アムロが「蒸着!」の可能性もあったか
『機動戦士ガンダム』の企画段階初期では、『フリーダムファイター、ガンボーイ』という名前でした。その中身は完成した『ガンダム』と全く違う設定で驚かされます。
「ロボット」ではなく「強化スーツ」だった?

リアルロボットアニメの金字塔『機動戦士ガンダム』の初期企画は「フリーダムファイター、ガンボーイ」と名付けられ、私たちが知るガンダムシリーズの世界観や設定とはかけ離れていました。一般に認識されている「ガンダムらしさ」が形成されるまでの経緯は、想像を超える意外なものでした。
初期案において「ガンボーイ」は、巨大ロボットではなく、人間が装着する「強化スーツ(機動歩兵)」として構想されていました。チーフシナリオライターの星山博之氏の企画書には、「人間の能力を何十倍、何百倍にも増価させ、あらゆる環境に適する能力を持つ」と記されています。イメージとしては、のちの「宇宙刑事」シリーズのコンバットスーツに近いかもしれません。
さらに、戦闘機や戦車と合体して形態を変えるギミックも検討されていました。これが形を変えて、ガンダムの「コアブロックシステム」へと受け継がれました。
また、当時切っても切れないスポンサーである玩具メーカーには「ロボットを出してくれ」と言われていたことから、最初に考案された強化スーツは2.5mの大きさでした。しかし「おもちゃを売るためには巨大ロボットでなければならない」という商業的要請があり、制作側の「リアルな強化スーツを作りたい」という製作陣のこだわりも結びついた結果、「18mのモビルスーツ」という絶妙なサイズ感が誕生したのです。
敵は「異星人」、味方キャラは全員「日本人」だったが…?
「ガンボーイ」における敵勢力は、遠い星雲を本拠地とする軍事国家「ジオン帝国」です。地球人ではない「異星人」という設定でした。当時のロボットアニメの定番は、宇宙や地底からの「侵略者」を倒すという勧善懲悪の物語でしたが、この段階で「敵側にも切実な事情がある」という設定が盛り込まれていました。
ジオン帝国は、深刻な食糧危機や天変地異により存亡の危機に瀕しており、自国を救うために侵略を企てる……という設定でした。この「敵側の正義」という視点が、のちに人間同士の戦争を描くドラマへと昇華されます。
ジオン帝国の標的は地球から30光年離れた星「エレクトラー」です。エレクトラーは地球そっくりの環境のため、荒廃した地球から多くの地球人が移住しており、「ニューアース」と呼ばれています。味方側のメインキャラはエレクトラーで生まれ育った新世代の若者ですが、なぜか日本人しか登場しません。
敵側が異星か地底や海底などから現れた異世界の住人で、主役側のキャラは日本人ばかりなのは、『マジンガーZ』以来の、当時のロボットアニメにおける定番でした。企画初期の時点では、既存作品を踏襲する部分が大きかったようです。
その後、企画の第二段階「ガンボイ」になると、「地球外居住区」という設定が生まれ、のちの『ガンダム』のスペースコロニーに発展していきます。『ガンボイ』におけるジオンは、地球外居住区から生まれた独立国家となり、主役側と同じ地球人であるという設定になりました。
ロボットアニメの王道を覆す「主人公像」も
「ガンボーイ」の主人公は「本郷東」(ほんごうあずま)です。企画書によると「行動力と知力を備えた優等生」とあります。『マジンガーZ』の「兜甲児」に代表される、やんちゃな熱血漢とは180度違うタイプでした。
さらに企画書には「いわゆる優等生の持つ、冷たさ、自己顕示欲が仲間の反撥(はんぱつ)を買い、孤立することがある」と、東の性格に関する記述がありました。優等生であるがゆえに周囲から孤立しがちな東の性格が起点となり、それまでの熱血でポジティブな主人公とは一線を画す、内向的な主人公「アムロ・レイ」が誕生したといえるでしょう。
『ガンダム』の初期企画「ガンボーイ」には、既存作を踏襲する設定は見られたものの、一部には斬新な切り口がありました。その切り口を足がかりに、企画は誰もが知る『機動戦士ガンダム』の形に着地し、45年以上にわたって世界中で愛されるコンテンツになっていくのでした。
(LUIS FIELD)


