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『ばけばけ』トキとは大違い? 小泉八雲とセツの「英語学習」が一気に進んだ熊本時代 錦織のモデルも手紙で期待してたが…

連続テレビ小説『ばけばけ』第22週では、トキが英語を学ぼうとするも、苦戦しています。モデルの小泉八雲・セツ夫妻は途中で、英語学習が上手くいかなくなってしまったようです。

短期で一気に学ばせようとしていた

『連続テレビ小説 ばけばけ Part1 NHKドラマ・ガイド』(NHK出版)
『連続テレビ小説 ばけばけ Part1 NHKドラマ・ガイド』(NHK出版)

放送中の連続テレビ小説『ばけばけ』第22週では、主人公「松野トキ(演:高石あかり)」が夫「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」から英語を教わろうとするも、全く上達しない状況が描かれています。トキのモデルの小泉セツも、夫・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)と英語で流暢に会話することは叶わなかったと言われていますが、それでもハーンが彼女の英語に関して、「上達している」と語った時期はあったようです。

 1891年の夏にハーンと結婚したセツは、トキのように英語を必死に学ぼうとしていましたが、やがてハーンと「ヘルンさん言葉」と呼ばれる、英語と日本語を混ぜ、動詞や形容詞の活用を省いた独自の言語で話すようになりました。「ヘルンさん言葉」はかなり独特で、ふたりの子供たちですら、何を言っているのか分からなかったという証言が残っています。

 ただ、松江の親友・西田千太郎(「錦織友一」のモデル)に送った手紙を読む限り、ハーンは結婚後の最初の数年はかなり熱心に英語を教えようとしていたようです。

 熊本に移住して1年3か月後の1893年1月末の手紙では、ハーンは西田にこれから「急速記憶法」と称する方法で、セツに英語を教えようとしているところだ、と語っていました。しかしハーンはこの時点で、上記の方法は心身を疲れさせるから、上手くいかなければ止めなければならないことや、セツの出雲訛りの発音のせいで英語の学習が難しくなっていることも書いています。

 そして同年の3月初旬の手紙では、ハーンはさっそく「セツは、英語がかなり進歩しています」と綴っていました。夏には西田と英語で少しは会話ができるだろう、とまで書いています。ハーンはこの時、まだ28回しかレッスンを行っていなかったそうです。

 またハーンはこの手紙で、「言葉を覚える自然の順序は、先ず第一に、上手く話せるようになることです。その次に書くこと、そして文法は最後です」という教育方針を語っていました。これはハーンが尊敬していたという、イギリスの哲学者・社会学者のハーバート・スペンサーの考えを参考にしていたそうです。

 そして、手紙を受け取っていた西田も、セツの英語学習に期待を寄せていました。3月中旬に西田からハーンに送った手紙には、「ご夫人が英語でかなり進歩されているのは大変嬉しいことです。それはやがてヘルン言葉に取って代わるかもしれませんね」と書かれています。

 しかし、1893年11月17日に長男・一雄を生んだセツは、この少し後につわりによって体調を崩し、勉強どころではなくなってしまったようです。ハーンは5月時点の手紙で、西田にセツの妊娠を伝えています。

 ただ、この時期の英語学習は無駄に終わらず、セツが手帳2冊分にものぼる英単語を覚えたことで、それ以前から使っていたヘルンさん言葉は劇的に進歩したそうです。このことがなければ、セツが原話を語ったというハーンの再話文学の代表作『怪談』(1904年発表)などの作品は、生まれなかったかもしれません。

 ちなみに、成長して父と同じ物書きになった一雄は、著書『父「八雲」を憶う』のなかで、このようなことを書いていました。

「父は英語を母に―教えてくださいと頼むのに―少しも教えませんでした。私の習う傍で母が立ち聴きして覚えようとしても、『あなたには他にあなたの仕事があります』と申して母を立ち退かせました」

 さらに、『父「八雲」を憶う』によれば、ハーンはセツに「あなたが英語が達者になれば、つい言わぬでもよいことを西洋人に話したりなどして、ろくなことはない」といった意味の言葉を語ったこともあったといいます。

 ハーンがセツに英語を必死に教えていた時期があったのは資料からも明らかですが、一雄に物心がつく頃には、上記のような考えに変わっていたようです。いったい何があったのか、『ばけばけ』でも終盤でこのような場面があるのか、気になります。

※高石あかりの「高」は「はしごだか」

参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(潮出版社)、『父「八雲」を憶う』(千歳出版)、『ラフカディオ・ハーン 西田千太郎 往復書簡』(八雲会)、『小泉八雲とその妻セツ 古き良き「日本の面影」を世界に届けた夫婦の物語』(KADOKAWA)

(マグミクス編集部)

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