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『ゲゲゲの鬼太郎』漫画家・水木しげる氏の命日 現代人に響く名言を遺す

水木しげるが遺した名言

著:武良布枝『ゲゲゲの女房』(実業之日本社)
著:武良布枝『ゲゲゲの女房』(実業之日本社)

 しかし1953年にTV放送が開始された頃から紙芝居は休息に廃れ、水木氏も貸本作家への転身を余儀なくされます。貸本時代には漫画家としてのデビュー作である『ロケットマン』のようなSF作品や『水木しげる作戦シリーズ』を始めとした戦記物などさまざまなジャンルの作品を手がけています。この時期の作品は長らく見ることは難しい状態でしたが、今では水木氏の大全集に収録されており、電子書籍化もされているためいつでも購入できます。ある作家が描き残した原稿を仕上げた幻のデビュー作と言われる『赤電話』も収録されているのが、マニアにはうれしいところでしょう。

 この時期に多くの作品を描き上げた水木氏ですが生活は苦しく、いつも質屋に通っていたことがしばしば自伝で語られています。そんな状況でも神保町の古本屋で妖怪関連の資料を丹念に集めていたことが、後の人気作家への道を切り開く原動力となりました。

 1960年には貸本で『墓場鬼太郎』シリーズを、1963年には『悪魔くん』を執筆します。徐々に漫画家として名を上げた水木氏は1964年に雑誌「ガロ」に参加、1965年に「週刊少年マガジン」で『墓場の鬼太郎』の連載を開始します。1966年には『悪魔くん』も連載マンガとなり、同年にTVドラマ化されて水木氏は一躍人気作家への道を駆けあがっていきます。1968年には『墓場の鬼太郎』が『ゲゲゲの鬼太郎』へ改題の上でアニメ化も果たしてさらに人気が爆発し、水木氏は多忙を極めるようになっていきます。

 忙しさの絶頂にあった水木氏ですが、徹夜は1日しても2日は絶対にせず、なるべく1日10時間ほど眠るように心がけていたそうです。短編マンガ『睡眠力』では在りし日の手塚治虫氏と石ノ森章太郎氏に対し、水木氏が睡眠力の大切さを力説しています。

「“睡眠力”によって傷とか病気を秘かに治し、今日まで“無病”である。私は“睡眠力”は“幸福力”ではないか、と思っている」

 妖怪研究に多大な功績を残した水木氏ですが、それ以上に、睡眠力について名言を残したことが、忙しい現代人に対する最高のプレゼントではないでしょうか。筆者も水木氏にならい十分な睡眠を確保しようと常日頃から心がけています。

(早川清一朗)

【画像】水木しげるが遺してくれた「妖怪」や「名言」

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