菅野よう子の手がける神アニソン3選 「1度は耳にした」曲のオンパレード
1994年に『マクロスプラス』の音楽を担当したことで、アニメサントラの潮流を変えたといわれている菅野よう子さん。『カウボーイビバップ』や『創聖のアクエリオン』など、印象的なアニメ音楽を多数手がけています。作品の世界観を色濃く反映した菅野さんのアニメソングのなかで、特に評価の高い曲を3つご紹介します。
どんなジャンルでも名曲を生む 天才・菅野よう子
2008年度にJASRAC賞銀賞を、2019年に平成アニソン大賞作曲賞を獲得するなど、数々の受賞歴を誇る作曲家・菅野よう子さん。1994年に菅野さんが担当した『マクロスプラス』の音楽は、アニメサントラの潮流を変えたともいわれています。そこでこの記事では、作品の世界観を色濃く反映する菅野さんのアニメソングのなかで、特に評価の高い曲を3つご紹介します。SNSでも「最高に気持ちが高ぶる」「美しいとしかいいようがない」と評判です。
●『rise』(2004年)『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』オープニングテーマ
『rise』は作編曲を菅野よう子さん、作詞をシンガーソングライター・ORIGAさんと作詞家・Tim Jensen氏、歌唱をORIGA(オリガ)さんが担当した曲です。英語とロシア語が入り混じる歌詞に加え『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』の人気もあり、海外でも広く愛されている曲です。
『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』のオープニングテーマである『rise』。疾走感あるサウンドにスタイリッシュなオープニング映像がマッチしており、その完成度の高さにネット上でも「OPが飛ばせない」との声が多くみられます。西暦2032年を舞台とする本編の世界観を、サイバー感あふれるメロディーで絶妙に表現。菅野さんが「世界一好きな歌声」と称したORIGAさんの歌唱は、この曲をその神秘的な歌声で唯一無二のものにしています。
ORIGAさんの手がけた歌詞は、作品の中心となる公安9課メンバーの生き様を思わせます。「我々は戦士 立つか死ぬかだ」「その足で立ち 共にあれ」など、命がけの任務にたずさわる彼らの決意が、歌詞にもにじみ出るようです。あまりの人気に、「ファンにより非公式の完全英語歌詞が制作された」と言われるほど広く愛されている『rise』。初めて聞く際は、ぜひオープニング映像と一緒にご視聴ください。
●『プラチナ』(1999年)『カードキャプターさくら』オープニングテーマ
『プラチナ』は作詞を岩里祐穂さん、作曲を菅野よう子さん、歌唱を声優・坂本真綾さんが担当した曲です。2017年のNHK BSプレミアム『カウントダウンLIVE アニソン ベスト100!』では7位を、2019年「平成アニソン大賞」では声優ソング賞(1989~1999年)を受賞しています。
『カードキャプターさくら』第3期のオープニングテーマである『プラチナ』。明るく爽やかでどこかかわいらしい曲調は、主人公・木之本桜(きのもと・さくら/CV:丹下桜)のイメージと重なります。歌詞にも、頑張り屋でめげない桜らしく「信じる それだけで 越えられないものはない」「『思い』が全てを変えてゆくよ」と前向きな言葉が並び、聴いていて勇気づけられた視聴者もいるのではないでしょうか。透明感ある坂本さんの声が、作品の世界観をよく表した本曲にぴったりと合っています。
また、細かい転調がさりげなく繰り返される絶妙なメロディーラインも、高く評価されています。約8000曲ものアニメ音楽に携わった作曲家・田中公平さんによると、Aメロ「私の世界~隠れてるはず」のなかだけで、なんと4回も転調。その後も細やかな転調がありつつ、サビではベタながらも泣けるメロディーに落ち着いているそうです。高度なテクニックが盛り込まれながらも聴きやすい本曲は、「魔法みたいな曲」「好みすぎ」と視聴者からも愛されています。なお歌唱を担当した坂本さんは、当時菅野さんの音楽プロデュースを受けており、本曲以外にも『約束はいらない』『トライアングラー』など数々のアニソンでタッグを組んでいます。
●『ライオン』(2008年)『マクロスF』オープニングテーマ
『ライオン』は作詞・作編曲を菅野よう子さんが(作詞はGabriela Robin名義)、歌唱を歌手・May’nさんと声優・中島愛さんが担当したデュエット曲です。オリコンのシングルデイリーチャートでは2位、週間チャートでは3位を記録。カラオケ「JOYSOUND」を運営する株式会社エクシングの「カラオケ年間ランキング」では、アニメソング部門にて1位の『残酷な天使のテーゼ』に続き、4年連続2位を記録している人気曲です。
TVアニメ『マクロスF』第18話からのオープニングテーマである『ライオン』。ダブルヒロインであるシェリル役(歌パート)・May’nさん、ランカ役・中島愛さんのデュエット曲として、高い人気を誇っています。その難解な歌詞に、「『星座の導き』『ライオン』から、獅子座のアルトのことを歌っている」「『ライオン』は『live on(生き残る)』の熟語から来ている」と、その意味を深く考察するファンもいるほど。なお、菅野さんによるとこの曲は「三角関係」を表しているそうです。サビの冒頭で繰り返される「生き残りたい」を、ふたりが『君』に同時に言っていることで三角関係が成立しているとのこと。
ポップでありながらもふたりの強い気持ちが感じられる曲調は、戦場で戦う彼女たちの命がけの恋を感じさせます。ヒロインたちが歌で戦う「マクロス」シリーズらしさが詰まった曲といえるのではないでしょうか。たたみかけるような掛け合いを経て、最後にふたりで「私眠らない」とユニゾンするパートからは、それぞれが一歩も譲らない三角関係がひしひしと感じられます。声質も表現方法も全く違うふたりですが、その違いが味になり、聴きやすくまとまっている名曲です。
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さまざまなジャンルの曲を自由自在に作曲し、「天才」との呼び声も高い菅野よう子さん。アニソンはもちろん、CMソングの作曲やアーティストへの楽曲提供も数多く行っています。次はどんな曲を生み出してくれるのか、菅野さんの今後の活動からも目が離せません。
(新美友那)