一度じゃ終わらない? 鳥肌ものの「タイトル回収」で読者に衝撃を与えた作品3選
作品の命ともいえるタイトルには、読者に知られていない重要な意味が隠されていることもあります。その意味を、鳥肌が立つほどきれいに回収している作品もあり、高い評価を受けています。
鮮やかなタイトル回収に、拍手喝采!
作品のなかには、そのタイトルに重要な意味が隠されており、意外な形でその意味が分かることもあります。意味の回収が鮮やかだと、鳥肌が立つほどの感動をおぼえるものです。そこで、マンガ史に残るような「鳥肌もののタイトル回収」を成し遂げた作品を探してみました。
※この記事は、『遊☆戯☆王』『彼方のアストラ』『Dr.STONE』のネタバレを含みます。
●『遊☆戯☆王』
2004年に完結し、作品に基づいたカードゲームが爆発的な人気を誇った『遊☆戯☆王』は、原作のタイトル回収にも高評価を受けています。一見、主人公である「遊戯」が決闘王(デュエルキング)を目指す話に見える本作ですが、タイトルに込められた別の意味が、最終話で明かされます。
遊戯のなかに宿った「もうひとりの遊戯」は、古代エジプトの王「アテム」でした。遊戯はアテムと最後のデュエルを行い、見事勝利して、死者であるアテムの魂を冥界へと送ります。三千年も現世をさまよった王の魂は、ついに遊戯と別れ、彼らは別々の道へと歩き出すのでした。
最終話のサブタイトルは「遊戯 王」です。メインタイトルとたった1字の違いで、本作が「遊戯」と「王(アテム)」の物語であることを示しました。サブタイトルの空白は、ふたりのデュエルや別れも表すと考えられ、「回収が美しすぎる」と読者の感動を呼びました。
●『彼方のアストラ』
『SKET DANCE』の原作者である篠原健太先生の2作目で、2017年に完結した作品です。高校生の「カナタ・ホシジマ」たち9人は、「惑星キャンプ」という名目で宇宙へと旅立ちます。しかし、突如現れた謎の球体に飲み込まれ、カナタたちは一瞬のうちに、宇宙で漂流するハメになるのです。
5012光年の彼方へと遭難してしまったカナタたちは、「アストラ号」に乗り星々を経由しながら、なんとか帰ろうとします。しかし、惑星キャンプの本当の目的は、カナタたちの殺処分であることが明らかになります。実はカナタたち9人全員が、違法クローン人間だったのです。
さらに、彼らが帰ろうとしている先は、地球ではなく惑星アストラであると判明します。タイトルは「カナタのアストラ号」という意味に加え、「彼方にある惑星アストラ」という意味もあるのでしょう。ほかにも多くの伏線がうまく隠されており、2周目を読みたくなる作品です。
●『Dr.STONE』
2022年に完結した『Dr.STONE』は、人間が石化してしまった世界で目覚めた「大木大樹(おおき たいじゅ)」と、その親友「石神千空(いしがみ せんくう)」のSFサバイバルマンガです。千空たちは科学の力を駆使し、ゼロから文明を作り上げようとします。
食料を採取して塩で食べる原始人のような生活から、地道に発明を重ねていく本作では、タイトル回収が何度も行われます。1度目のタイトル回収は、科学が未発達の世界で「医者代わりの命の石」となるせっけんを発明し、それが『Dr.STONE』の意味かと思われました。
しかし、その先では石化の現象を「Dr.STONE」と呼び、さらにさまざまな場面で「Dr.STONE」が出てくるうえ、終盤にも壮大なタイトル回収が待っているのです。二度三度とタイトル回収するうえ、最後のタイトル回収は特に見事です、ぜひ本編でご確認ください。
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予想もつかないタイトル回収シーンは、読者の心をゆさぶるだけでなく、作者の構想の壮大さも感じさせてくれます。「鳥肌体験」をしてみたい方は、ぜひ上記3作品を読んでみてはいかがでしょうか。
(新美友那)