『ちびまる子ちゃん』勇退のキートン山田さん、ナレーション職人への契機「改名」だった
改名がきっかけで始まった、ナレーションでの活躍

実は、山田さんは一時期から急速に声優としての仕事が減り、日雇いの内職をしながら引退も考えていた時期があったそうです。この時、心機一転するために芸名を現在の「キートン山田」へと改名しました。由来は喜劇役者のバスター・キートン、そして「聞いとんのか山田!」という言葉からもじったそうです。
ところが、周囲からは改名が仕事に与える影響を懸念されました。筆者も最初に改名を見たときは違和感をおぼえたくらいです。しかし、この改名がうまくいったのか、その後はふたたび安定した人気を誇るようになりました。本人によると、改名は主にナレーションの仕事をしようと思ったからだそうです。
その思いが引き寄せたのか、1990年に始まった『ちびまる子ちゃん』でナレーションに抜擢されました。その活躍は今さら語る必要がないほど、みなさんもご存じのことでしょう。作品中に「キートン山田」という、そのまんまのキャラが出て演じているほど、全国区の知名度となったのでした。思い切った改名がうまくいったということです。
このナレーション、最初は代役として声を当てたそうですが、その声を聞いた原作者のさくらももこ先生が「この声だ!」と気に入って、正式にナレーション役になったそうです。
ちなみに有名となった「後半へつづく」は、間が開いたことを気になった山田さんが何気なく入れたアドリブでした。本来なら声優のアドリブを一切許さなかったほど厳しいさくら先生でしたが、このセリフは気に入ってOKが出たそうです。
実はこの頃、筆者は山田さんとお会いしたことがありました。あまりのうれしさで舞い上がって、演じたキャラの名前を次々挙げていく筆者に山田さんは……「よくそれだけ知っているね」「キミのようなファンが自分を支えてくれたんだろう」と、おっしゃってくれたことがあります。
心のなかでは、まる子のナレーションのようなツッコミを入れてほしいと思った筆者でしたが(笑)、たいへん優しくて紳士的な方でした。
長年同じ役を演じている役者にはいろんな方がいます。最後までやり遂げることもひとつの道だと思いますが、山田さんのようにまだ余力のあるうちに後進に道を譲ることも立派なこと。今回の報道で「引退」と言われる方がほとんどですが、筆者は「勇退」だと思っています。
力をなくしての引退でなく、まだ力を残しての勇退。ファンとして寂しいですが、山田さんのこれからの人生を応援し、今まで演じてくれた声の数々をこれからも聞いていこうと思います。
(加々美利治)
※TVアニメ『ちびまる子ちゃん』キートン山田さん最後の出演回「ある春の一日」の巻は、2021年3月28日(日)18:00~18:30 、フジテレビ系列で放送予定です。




