今週の金ローで『るろうに剣心』放送。人気マンガの実写化が成功した要因は?
幕末最強と称された「人斬り抜刀斎」こと緋村剣心を、佐藤健さんが演じたアクション時代劇『るろうに剣心』。人気コミックの実写化は原作ファンから酷評されるケースもありますが、実写版『るろ剣』はファンからも好意的に受け入れられました。実写版『るろ剣』が大成功した理由は、どこにあったのでしょうか?
10年間に及んだ人気シリーズが完結

和月伸宏氏の人気コミック『るろうに剣心 明治剣客浪漫譚』は、佐藤健さん主演作『るろうに剣心』(2012年)として実写映画化され、興収30億円を超えるヒット作となりました。第1作のヒットを受け、『るろうに剣心 京都大火編』『るろうに剣心 伝説の最期編』(2014年)が連続公開され、日本だけでなくアジア各国でも人気を博しました。
2021年4月24日からはシリーズ最新作『るろうに剣心 最終章 The Final』が劇場公開され、さらに6月4日(金)にはシリーズ完結編となる『るろうに剣心 最終章 The Beginning』の公開が予定されています。
記念すべきシリーズ第1作『るろうに剣心』は、4月30日(金)の「金曜ロードショー」(日本テレビ系)にて6年ぶりにTV放映されます。人気コミックゆえに、実写化が発表された当初は多くの原作ファンから不安視する声も出ましたが、完成した実写版はファンの予想をいい意味で裏切ってみせました。実写版「るろうに剣心」シリーズが、大成功した要因を探ります。
原作ファンも驚いた、斬新なアクションシーン
明治時代を舞台にした『るろうに剣心』を実写化したのは、元NHKディレクターの大友啓史監督です。大友監督はNHK在籍時に福山雅治さんが主演した大河ドラマ『龍馬伝』のチーフ演出を務め、大河ドラマ史に残る人気作にしました。動乱の幕末を描いた『龍馬伝』で、「人斬り以蔵」を演じたのが若手時代の佐藤健さんでした。人斬りとしての過去を引きずる剣心役に、佐藤さんはぴったりでした。
それまでの時代劇はスローテンポの作品が多かったのですが、大友監督が手掛けた実写映画『るろうに剣心』はテンポがよく、とりわけアクションシーンは驚くほどスピーディでした。剣心役の佐藤さんは、クランクインの4か月前からアクションシーンの特訓とリハーサルに取り組み、撮影が始まってからも3か月間のトレーニングを続けました。敵役の綾野剛さんも、2か月以上のトレーニングを積んだそうです。人気俳優たちがスタントを使わずにアクションシーンに挑むことで、スクリーンに大変な臨場感がもたらされました。
第1作で大きな話題となったのは、剣心が斜め走りで地面を駆け抜け、群がる敵をなぎ倒すシーンです。このシーンは佐藤さんがスパイク付きの地下足袋をはくことで、実現可能となったそうです。また「るろうに剣心」シリーズでは度々、剣心が壁を蹴って跳ぶシーンがありますが、これにもちょっとした秘密がありました。スクリーンでは分からないように、壁にゆるい傾斜がつけてあり、駆け上がりやすくなっていたそうです。とはいえCGは極力使わない、生身のアクションならではのスリリングさが観客にも伝わったことは間違いないでしょう。
NHK時代にハリウッド留学を経験していた大友監督は、エンタメ作品におけるアクションパートの重要性をよく理解していました。それまでの日本映画にはなかった斬新かつスピーディなアクションの数々によって、実写版『るろうに剣心』は原作ファンも取り込むことに成功したのです。『るろ剣』は日本のエンタメ界に新しい夜明けを招いた、と言っても過言ではありません。