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今じゃアウト? 「少年ジャンプ」で許されたギリギリ「下ネタ」の攻防

「週刊少年ジャンプ」と下ネタは切っても切り離せない関係であると同時に、実にナイーブな関係でもありました。少年誌のギリギリを攻め続けた平成のジャンプ作家陣による格闘の歴史をひもといていきたいと思います。

「下ネタ」から読み解く「ジャンプ」の時代性 昭和から平成にかけての変遷

著:徳弘正也 『ジャングルの王者ターちゃん』電子版第1巻(集英社)
著:徳弘正也 『ジャングルの王者ターちゃん』電子版第1巻(集英社)

「週刊少年ジャンプ」(以下、ジャンプ)ではどこまで下ネタが許されてきたのでしょうか。ここでいう下ネタとはラブコメに見られるようなお色気シーンではなく、あくまでもギャグの一種としての下ネタです。少年誌における下ネタの線引きは実に曖昧模糊としていて昭和では許されていた下ネタでも、平成では自主規制の対象となったりします。とはいえその裁量の多くは編集部に委ねられていたようで、平成になっても「それありなの?」とドキリとするような下ネタが本誌に登場することもしばしば。本稿では平成のジャンプ作品の「下ネタ」の変遷を読み解いていきたいと思います。

●成人男性が陰嚢で空を飛ぶ『ジャングルの王者ターちゃん』

 1988年から1990年にかけてまさに昭和と平成の過渡期に連載されたのが『ジャングルの王者ターちゃん※』(著:徳弘正也)です。成人男性であるはずのターちゃんが陰嚢を広げて滑空したり、怒張した局部の突端から尿ではない何かがにじみ出たり、今の「ジャンプ」では到底考えられない下ネタのオンパレードなのです。また電子版では「本書では卑語を伴った表現があります」といった見慣れぬ注意書きが冒頭にあります。おそらくは作中に登場するウポポ族の言語が、文字に起こすと直接的な“卑語”になってしまうというギャグに対してのものでしょう。
※正式名称は最後にハートマーク

●今なお語り継がれる伝説の品性下劣ギャグ『幕張』

 時代は完全に平成に移行。1996年から1997年にかけて連載されたのがあの『幕張』(著:木多康昭)です。今なお史上最低の品性下劣マンガとして“高い評価”を受けているレジェンドです。青年誌「ヤングマガジン」で連載されていた『行け!稲中卓球部』(著:古谷実)の連載がちょうど終わる頃に始まった同作ですが、どうにも作者が少年誌であることを忘れているとしか思えないほどの過激な下ネタで大暴れします。

 第1話の主人公のひとり、奈良重雄がファミレスのトイレで無理やり“ロストヴァージン”させられるシーンは多くの読者に衝撃を与えました。(『幕張』は下ネタ以外でも多くのタブーを破っています)。ちなみに局部が怒張する描写は健在で、この頃の「ジャンプ」ではまだ許容範囲内だったようです。

●初期『BLEACH』の過激な下ネタ「女だってボッキできるわよ!!」

 21世紀に入ると徐々に潮目が変わり、ギャグマンガはさほど性関連の下ネタを多用することもなくなりました。そんななか、意外なところで過激な下ネタを投げ込んでくるマンガが登場します。それが『BLEACH』(著:久保帯人)です。バトルシーンの間に描かれるわずかな日常パートで、本匠千鶴というキャラが「24時間耐久ペッティングしちゃうぞ」「女だってボッキできるわよ!! たとえば…ク(ここで制止が入る)」など、直接的なワードを口走ります。

 何やら唐突で、読者の度肝を抜いたこのやり取りですが、逆に言えば「性的なワードは控えるべき」という共通意識ができ上がっていたことを意味しています。

●下ネタの自主規制をネタにした『べしゃり暮らし』

 最後にご紹介するのは2005年に連載開始された『べしゃり暮らし』(著:森田まさのり)です。こちらの第1話は「ジャンプ」の下ネタの扱いを概観する上で非常に示唆的です。放送部員である主人公の圭右は、お昼の校内放送中に「オナニーの最中に鼻血が出てよ」とトークを展開しようとします。すると部長が即座に放送をシャットダウン。それに対し圭右は「オナニーはギリギリセーフだろが!」と激昂します。「下ネタ」の自主規制自体を描いた非常に重要なシーンではないでしょうか。その後、『べしゃり暮らし』が本誌から「ヤングジャンプ」に移籍したことも、時代の移り変わりを象徴する出来事でした。

 ここまで平成に入ってからの「ジャンプ」の「下ネタ」の変遷をたどってきましたが、今回紹介したギャグ表現としての「下ネタ」とは別に、『I”s(アイズ)』(著:桂正和)、『いちご100%』(著:河下水希)、『To LOVEる』(脚本:長谷見沙貴、作画:矢吹健太朗)といったラブコメ作品などには「少年誌におけるお色気シーン」という、別軸の変遷を辿ることもできます。とりわけ、『To LOVEる』は規制の網を抜けるような表現方法を開拓し続けていることで有名ですが、その詳細については、今回は割愛させていただきます。

 ゾーニングという概念が定着してきてはいますが、「ジャンプ」はまだまだ公共性が高いもの。だからこそ「ジャンプ」での下ネタの扱われ方はこれからも時代を反映し続けることでしょう。令和において「ジャンプ」の下ネタがどのように変わっていくのか……定点観測しても決して時間の無駄ではないと思います。

(片野)

【画像】際どい描写に少年がドキドキした「ジャンプ」作品

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