高性能な量産型「ゲルググ」の悲運。一年戦争で出番が少ないのは物語以外にも理由が…?
初代『機動戦士ガンダム』に登場したジオン軍のモビルスーツのなかで、唯一RX-78-2ガンダムとの交戦シーンが描かれなかったのが、MS-14A 量産型ゲルググです。出力・推力共にガンダムを上回り、ジオン軍初となるビームライフルを装備した高性能機でありながら、活躍できなかったのはなぜでしょうか。
高性能ながら、活躍できなかったゲルググ

初代『機動戦士ガンダム』に登場した数多くのモビルスーツ・モビルアーマーの中で、唯一アムロ・レイ操るRX-78-2 ガンダムとの交戦描写が描かれていないのがMS-14A 量産型ゲルググです。
ジオン軍のモビルスーツとして初めてビームライフルを装備し、出力・推力ともにガンダムを上回る高性能機でありながら、交戦シーンはTVアニメ版・劇場版ともにセイラ・マスの搭乗するGファイター(劇場版ではコアブースター)に撃墜され爆発四散した描写のみとなっています。
生産数は740機(※注1)とされており、宇宙世紀0079年6月末にはプロトタイプが完成していました。しかし連邦軍から入手したエネルギーCAP技術を使用したビームライフルの開発が遅れ、本格的な生産開始は11月となったため配備が遅延。完成した機体のうち、67機がア・バオア・クー戦に参加したとされています。劇場版『機動戦士ガンダム Ⅲ』ではア・バオア・クー戦の最中に到着したキシリア・ザビのグワジンが入港するシーンでMS-05 ザクIとともに登場し、旧式機と最新鋭機が同時に投入されている総力戦であることを、見事に演出していました。
しかし本編では学徒動員兵がゲルググに搭乗していると説明されており、キシリアが「脆すぎるようだ」と吐き捨てるなど活躍は見られない状況となっていたのです。
漫画『機動戦士ガンダム 光芒のア・バオア・クー』(作:Ark Performance)ではこのときの状況が描かれており、ベテランは機種転換が間に合わなかったためザクやドムのまま。
適性が高い学徒動員兵はベテランと隊列を組むことを期待されてザクやドムがあてがわれ、そうではない人間に、数合わせとしてゲルググがあてがわれたという解釈がなされています。
マ・クベによって提唱された統合整備計画により異なる機種の操縦系規格が早いうちに整備されていればこのような状況にはならなったと考えられますが、残念ながら計画が実行されたのは量産型ゲルググの完成後であり、すでに手遅れでした。