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「ガンダム」シリーズ・2つの悲劇 フォウとステラの物語が語り継がれる理由は

生き残ることでより悲劇の道を歩んだシン

シン・アスカとステラ・ルーシェが描かれる 小説『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』第2巻(原作、矢立肇・富野由悠季、著:後藤リウ/KADOKAWA)
シン・アスカとステラ・ルーシェが描かれる 小説『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』第2巻(原作、矢立肇・富野由悠季、著:後藤リウ/KADOKAWA)

 もうひとつの悲劇的な物語は、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』のシン・アスカとステラ・ルーシェの出会いです。ふたりは本編開始時に初めて出会いますが、その時のことはお互いに覚えていないことになっていました。

 この後、シンとステラは戦場で何度となく戦いますが、お互いに顔を合わせるわけではないので認識のないまま時間が過ぎていきます。そのふたりがお互いを明確に意識したのは、溺れているステラをシンが助けたことでした。この偶然の出会いが、ふたりの運命を加速させます。

 ステラには行動を抑制するためにブロックワードという暗示が施されていました。「死」に関連する言葉を聞くと恐慌状態になってしまうのです。それを知らずに「死」を口にしたシンの目の前でパニックを起こすステラ。しかし、シンの「守る」という言葉に落ち着きを取り戻します。

 しばらくした後、「死」という言葉を聞いたステラは、シンの「守る」という言葉を思い出し、自分の育った研究所を救おうと単独で出撃して捕らえられてしまいました。パイロットだったステラの姿にがく然となるシン。しかし、ステラは記憶操作で過去の不必要な情報はリセットされていてシンのことを忘れていました。

 その後、消された過去を奇跡的に思い出すステラ。しかし、定期的な薬剤投与が必要だったステラは徐々に衰弱していきます。死体でもサンプルとして本国に送るという話を聞いたシンは、軍機違反で重罪になることを承知でステラを脱出させ、戦争とは関係のない世界で過ごすことを条件に敵軍に引き渡しました。

 しかし、このシンの思いは叶えられなかったのです。ふたたびステラは戦場に繰り出され、シンと出会ってしまいました。そして、シンの目の前でその命を散らします。もう二度と誰かに弄ばれたくないと、シンは雪の降る湖にステラを水葬しました。

 ところが、この悲劇がさらなる悲劇へと続きます。家族に続いてまたしても目の前で大切な人を失ったシンは、ステラの死の原因を戦闘に介入してきたフリーダムが原因だと思い込みました。そこにつけ込む他者の思惑もあって、シンは自分の行動に絶対の自信を持ちます。それが他者の敷いたレールの上とも気付かずに、シンはフリーダムを撃墜し、良き指導役だったアスラン・ザラも裏切者だと思い込んで撃墜しました。

 そのまま最終決戦まで自分の意志で戦っていると思い込んだシンは、敵となったアスランとの戦いを迎えることになります。しかし、アスランの言葉に迷いを見せるシンは撃墜され、ステラの幻影と邂逅しました。その時、シンは自分のしたことを振り返る余裕がようやくできたのかもしれません。目を覚まして号泣するシンを見て、筆者はそう感じました。

 他にも同様の展開は「ガンダム」シリーズでいくつか見受けられますが、このふたつを印象的だと感じる人は多いことと思います。その理由は自分の意志とは関係なく戦いを強要される点でしょう。実際にゲームなどで、この場面を再現する場合、ほとんど悲劇を回避するシナリオが用意されています。それほどまでに、このふたつの悲劇はファンの心に響いていたのかもしれません。

(加々美利治)

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