金ローで『アナ雪』が2週放送 元ネタは「怖すぎ」なのに、ディズニーアニメでは人気の理由
ディズニーアニメ『アナと雪の女王』と『アナと雪の女王2』は世界中で大ヒットしましたが、下敷きになったアンデルセン童話『雪の女王』に登場する「雪の女王」はもっと冷たく、ずっと恐ろしい存在です。原典を知ることで、ディズニー作品ならではの面白さをより実感できるのではないでしょうか。
ディズニーアニメ史上、最大のヒット作
「ありのままの姿 見せるのよ~」
松たか子さんが歌う挿入歌「レット・イット・ゴー」が大きな話題を呼んだディズニーアニメ『アナと雪の女王』(2014年)は、日本での国内興収が255億円を記録した大ヒット作です。続編『アナと雪の女王2』(2019年)も、国内興収133.7億円を記録しています。
心を閉ざしてしまったアレンデール王国の王女エルサ(CV:松たか子)と、その妹・アナ(CV:神田沙也加)との姉妹愛が、キャッチーなミュージカルナンバーを交えてドラマチックに描かれています。2021年11月12日(金)の「金曜ロードショー」(日本テレビ系)では『アナと雪の女王』が、翌週11月19日(金)にはテレビ初登場となる『アナと雪の女王2』がオンエアされます。どちらもノーカット放映です。
ディズニーアニメ史上、最大のヒット作となった『アナと雪の女王』ですが、原典となったアンデルセン童話『雪の女王』とはまったく異なる物語となっています。アンデルセンが描いた「雪の女王」は、エルサよりもずっとずっと恐ろしい女性です。
ホラータッチだったアンデルセン童話
ディズニーアニメ『アナと雪の女王』の原題は『Frozen』となっています。王位継承者として生まれたエルサですが、手に触れたものを凍らせてしまうという不思議な力を持っていました。自分の能力が他の人を傷つけてしまうことを恐れ、エルサは心を閉ざし、氷の宮殿に引きこもってしまいます。そんなエルサの凍りついた心を、屈託なく育った妹のアナが冒険の数々を経て、やがて溶かしていくことになります。
一方、デンマーク生まれのアンデルセンが19世紀に執筆した『雪の女王』は、仲のよい少年カイと少女ゲルダが主人公です。ある雪の日、美しくも恐ろしい「雪の女王」がソリに乗って現れ、カイを連れ去ってしまうという背筋も凍るホラータッチの作品です。カイを連れ戻そうと、ゲルダは懸命に探し続けます。
雪の女王に愛された者は、体だけでなく心臓まで凍りつくことになります。雪の女王=死の象徴です。死は誰もが恐れるものですが、同時に生きている人間をすべての悩みからも解放してくれます。雪の女王から甘いキスを受けたカイを、ゲルダは取り戻すことができるかのか。児童向けの作品ながら、深淵さを感じさせる内容です。
雪の女王に対する畏敬の念を詩情豊かに描いたことで有名なのが、ソビエト連邦で制作された長編アニメ『雪の女王』(1957年)です。宮崎駿監督は新人アニメーター時代にこの『雪の女王』を観て、アニメーター業を続けることを決意したそうです。『雪の女王』のヒロインであるゲルダの一途な性格やキャラクターデザインなどは、その後の宮崎アニメに大きな影響を与えています。
脚本の初期段階では『アナと雪の女王』のエルサも悪役だったのですが、最初にできた曲「レット・イット・ゴー」がとても素晴らしかったので、エルサのキャラクター設定が変わることになったという経緯があります。機会があれば、ソ連版『雪の女王』もご覧になってください。名曲「レット・イット・ゴー」がなければ、エルサも冷たく恐ろしい女王になっていたかもしれません。