『るろうに剣心』の薫はどうやって剣心たちを養っていたのか 政府の恩給はもらえる?
1994年より連載開始され、全世界で7200万部を記録した剣術マンガ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』の主人公・緋村剣心は「流浪人(るろうに)」となって全国を漫遊していましたが、東京で神谷薫と出会い、神谷活心流道場の居候となります。さて、その後弟子もいない薫が、どうやって無収入の剣心を養っていたのでしょうか。
頻繁に破壊される神谷道場。儲かってる?

2017年に連載開始の『北海道編』も大好評の『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』は、幕末の剣客「人斬り抜刀斎」だった緋村剣心が、「不殺」を誓い明治時代の平和を乱そうとする悪漢に逆刃刀で戦いを挑む剣術マンガです。
さて、タイトルは「流浪人(るろうに)」ですが、剣心は劇中ではほとんどヒロイン・神谷薫の「神谷活心流道場」に居候しており、家賃を支払っている様子もありません。
一方、薫は神谷活心流の師範代ですが、門下生はほぼ無収入と思われる子供の明神弥彦のみ。弥彦は剣心と同じく居候も同然なので、収入とはなりません。さらに、喧嘩屋を廃業して無職となった相楽左之助も頻繁に飯をたかりにきます。さらに、神谷道場は菱卍愚連隊、隠密御庭番衆、斎藤一など、外敵によって頻繁に破壊され、その度に修繕しているようです。
また、剣心たちは頻繁に負傷し、治療費や衣服代もかかっているはずです。治療費は高荷恵が格安で診療してくれている可能性もありますが、戦うたびにボロボロになる衣装は毎回新調されているため、確実に買い直しています。
薫はどうやって、剣心たちの生活を面倒見ているのでしょうか。まず考えられる定期収入としては、前川道場の出稽古でしょう。ここで、稽古料を得ていることが考えられます。また、臨時収入としては「祖父の水墨画を売った」という描写がありますが、この程度では頻繁に破壊される道場の修理費にもならないのではないでしょうか。
他に考えられるのは、「明治政府がさまざまな名目で薫にお金を渡している」可能性です。剣心は権力欲が全くなく、明治政府の要職にも興味を示してはいません。しかし、明治維新の功労者である剣心に対して、川路警視総監などの要人が気にかけている描写はありました。
今まで剣心は「流浪人」で住所がなかったので、お金を渡すことも難しかったわけですが、東京に定住したのであれば、政府側が「受け取るべきお金を受け取ってほしい」となったのではないでしょうか。そして、「剣心に渡そうとすると受け取らないだろうから、面倒を見ている薫(時代背景としても、内縁の妻と見なされているでしょう)に渡す」ことにしているのではないかと思われます。作中で薫は剣心たちと頻繁に「赤べこ」(牛鍋屋)で外食していますし、生活苦を感じさせる描写もないため、可能性は高いです。
なお、剣心は鵜堂刃衛の事件のときに、浦村署長より谷十三郎の護衛を依頼され、その後も政府転覆を目論む志々雄真実の一派と戦っています。いざとなれば現役の軍人以上に政府のために働いているわけですから、そのたびに相応の謝礼が支払われていてもおかしくありません。
また『るろうに剣心』は明治11~12年にかけての物語ですが、陸軍軍人に対する恩給制度が始まったのは明治8年です。剣心は陸軍に所属したことはありませんが、名目上「公務による傷病のために退職した軍人」という扱いにして、恩給の支払いを発生させているのかもしれません。時代背景から考えても、明治政府高官に多数知人がいる剣心ですから、忖度された可能性もあるでしょう。
そして、剣心も薫がお金を受け取っていることに気づいたとしても、無収入の自分では神谷道場や薫への金銭的補填はできませんから、黙認するしかなかった……と考えられます。
明確な描写はありませんが、あれだけ世のため人のために戦ってきた剣心ですから、生活費を国が負担していても不思議ではありません。それに加えて出稽古の収入もあれば、牛鍋屋にそこそこ出かけていても問題なく生活できるでしょう。
(安藤昌季)