『シン・ウルトラマン』の侵略者・ザラブが地球を「見つけた」方法とは? 名作SFから考察
ザラブの包囲網が迫る

ところで、円谷プロ監修『ウルトラマン大辞典』(中経出版)のなかに、気になる記述があります。
「文明を滅亡させることが彼らザラブの使命であり、同様の工作員は他の惑星にも派遣されている」
これは厄介。ザラブを倒しても、第二のザラブが現れるかもしれません。彼らはどこから来るのでしょうか。『ウルトラマン大辞典』によると、ザラブの故郷は第8銀河系ザラブ星です。
他所(よそ)の銀河となると、地球から数百万光年は離れていると考えられます。『シン・ウルトラマン』の劇中世界が2022年だとすると、テレビ電波を受信できるのは地球から86光年以内。ザラブの母星では傍受不能です。
それでは、たまたまザラブがこの「86光年以内」を通りがかって受信した、ということでしょうか?
いや、電波は進むにつれて減衰します。地球外でテレビ電波を受信するには巨大な観測施設が必要です。米国の天文学者セス・ショスタクは、多数のパラボラアンテナを2.5万平方キロメートルの敷地に並べてつなげれば、地球のテレビ電波を数百光年先から傍受できると言います(『彼らはどこにいるのか?』キース・クーパー/河出書房新社)。
調べてみると、2.5万平方キロメートルは関東平野より広い面積です! そんな施設をザラブはあちこちの銀河に築き、常時監視しているのでしょう。外星人からすれば86光年は目と鼻の先。包囲網はすぐそこまで迫っているかもしれません。
でも、ウルトラマンがいれば地球は安全。きっと守ってくれる……って、本当にそれでいいの?
映画の後半、ウルトラマンをしのぐ強敵が現れます。人類も全く太刀打ちできません。
「このまま何もせず、何も知らないまま終わるというのが一番の幸せということか」
禍威獣特設対策室専従班(禍特対)に漂う、諦めムード。
しかしクライマックスで、ある男が立ち上がります。決戦に挑むべく知力を振り絞り、彼は全世界を巻き込む計画のリーダーになるのでした。人類が一致団結し、敵を倒す解を見つける。このワクワクする展開、映画『シン・ゴジラ』の「ヤシオリ作戦」を彷彿とさせます。
また、奔走する禍特対の姿は、初代ウルトラマン最終回のセリフと重なります。
「地球の平和は人間の手で掴み取ることに価値がある」
これぞ、全ウルトラマンシリーズに共通するメッセージ。『シン・ウルトラマン』では観る者にどう訴えかけられるのか。映画館で観た人もそうでない人も、配信で確かめてみて下さい。
(ツヤマユウスケ)



