年明けの「金ロー」は『ハウルの動く城』 派手な宣伝をやめた宮崎駿監督の真意は?
無意識下では18歳に戻るソフィー

隣国との戦争が本格化し、魔法使いとしての高い能力を見込まれたハウルは、国王から呼び出されます。でも、ハウルは国王のいる宮殿に行くことを嫌い、代わりにソフィーに行ってもらいます。荒地の魔女も呼ばれており、ふたりは長い長い宮殿の石段を汗だくで登ります。
老女たちが階段を上がるだけのシーンですが、とても魅力的なアニメーション表現となっています。老女たちの心臓がバクバクしている様子が、リアルに伝わってくるようです。こうしたシーンの描き方に、スタジオジブリの底力を感じさせます。
宮殿にようやく到着したソフィーは、王室付きの上級魔法使いサリマンから「このままではハウルは荒地の魔女のようになってしまう」と言われ、戦争に協力することを求められます。しかし、ソフィーは「ハウルは真っ直ぐよ、自由に生きたいだけ」と答え、サリマンの要請をキッパリと断ります。
ハウルを擁護することに懸命だったソフィーは、このとき18歳の少女の顔に戻っています。自分では気付いていませんが、寝ている間も少女になっています。無意識下では、ソフィーは18歳の少女のままです。荒地の魔女がソフィーにかけたのは「呪い」ではなく、一種の「暗示」だったのではないでしょうか。
自己肯定感を持てずにいたソフィーの内面に荒地の魔女は気付き、ソフィーを「私は老人だ」と思い込む自己暗示に導いたようにも感じられます。
前2作に比べ、意図的に抑えた宣伝戦略
物語の終盤、少年期のハウルとカルシファーとの間で交わされた秘密の契約の内容が明かされ、カカシにかけられていた「呪い」もとかれることになります。肝心のソフィーの「呪い」がとけたのかはっきりとは描かれていませんが、ソフィーも彼女の周りにいる人たちもみんな幸せそうです。観た人がそれぞれ自由に解釈できる「オープン・エンディング」となっています。
当時の宮崎駿監督は『もののけ姫』(1998年)が201億円、『千と千尋の神隠し』(2001年)が317億円、と右肩上がりで興収記録を打ち立てていました。『ハウルの動く城』の196億円もすごい数字なのですが、前2作に比べるとダウンしています。
前2作は公開前に莫大な量のTVCMが流され、宮崎駿監督やキャスト陣が多くのメディアに次々と登場し、大ヒットを後押ししました。しかし、『ハウルの動く城』からは宣伝攻勢を控えるようになります。
制作サイドが情報をあまり多く出してしまうと、作品に込められた謎解きの面白さを観客から奪ってしまうことになると宮崎駿監督は考え、宣伝方針の転換を図ったのです。興収記録を伸ばすことよりも、もっと大切なものがあるという判断だったようです。
ソフィーにかけられたのは本当に「呪い」だったのでしょうか? 白髪姿のソフィーは、元の18歳に戻ったのでしょうか? 物語を楽しみながら、それぞれの答えを見つけてみてください。
(長野辰次)





