『サザエさん』消えた親友「田中くん」知ってる? カツオが「後悔」した別れ
国民的長寿アニメ『サザエさん』。カツオには「中島くん」のほかに、もうひとり、熱い友情で結ばれた“親友”がいました。どのような人物だったのか、振り返ってみます。
カツオの目からとめどなくあふれる涙

アニメ『サザエさん』に登場するカツオの親友といえば、誰もが真っ先に「中島くん」を思い浮かべると思います。ところで、中島くんのほかにカツオと熱い友情で結ばれた親友がいたのをご存知でしょうか。
その名は「田中くん」。彼のことを知っている人は、多くはないでしょう。『サザエさん』公式ホームページにもウィキペディアにも彼の名前は記されていません。
田中くんはメガネにニキビ面の真面目で大人しそうな少年です。カツオの同級生ですが、青い学生服がトレードマークで、発言も少し大人びています。カツオには「友達が少ない」、花沢さんには「ひ弱」、中島くんには「勉強はできたけど運動神経は鈍かった」と言われていました(みんなひどい)。
初登場は「さらば友よ」(71年3月21日放送)。つまり、いきなり引越しのエピソードでした。タイトルの元ネタはむろん、アラン・ドロン、チャールズ・ブロンソン主演の同名映画(68年)でしょう。
磯野家を訪れ、銀行に勤める父親の都合で青森に引っ越すことになったと涙ながらに話す田中くん。カツオは「泣くな、田中! 東京が日本なら、青森も日本だ!」と威勢よく慰めます。しかし、田中くんはすぐさま帰ってしまいました。包丁を手に詰問するサザエに、カツオは何があったかを話します。
ふたりで語り合っていたときのこと。東京の大学に入って再会しようと言う田中くんに対して、カツオは「よし、待ってる! キミが何べん入試に失敗しようとも!」となぜか上から目線でアンサー。さらに、ナチュラルに失礼な発言を連発したため、真面目な田中くんが怒ってしまったのです。
サザエはすぐ謝りに行くように言いますが、カツオは意地を張って拒否。夜、列車で青森に発つ予定の田中くんは、夕暮れの公園でひとり悲しんでいました。夜になってもカツオは意地を張ったままでしたが、ワカメに田中くんから借りていた10円を返すように促され、口実を得たカツオは喜び勇んで駅へと駆け出していきます。
田中くんが乗る青森行きの寝台特急「はくつる」が出発直前、カツオはギリギリ上野駅に間に合いました。喜びのあまり、ホームで手をつないでくるくる回るふたり。そして、ついに別れのとき。「ママが言ってたぜ、青森にもお前みたいな奴がいればいいって」と言われ、カツオは「田中ーっ!」とはばかることなくホームで号泣。田中くんも列車のドアの向こうで泣いています。
ふたりは「はくつる」が宇都宮を通る頃、一緒にフネがつくった五目ごはんを食べようと約束していました。帰宅後、カツオは時刻表で「はくつる」が宇都宮を通る時間を調べ、田中くんを想いながら五目ごはんを口にします。カツオの目からは再び涙がとめどなくあふれてきました。同じ頃、列車の中で涙ながらに五目ごはんを食べる田中くん。悲しげな曲が流れる中、列車が走り去っていく場面でエンディングです。
「さらば友よ」は『サザエさん』のなかでも珍しい、ストレートに泣けるお話です。ここまでカツオが号泣することもめったにないと思います。また、カツオは中島くんと一緒にいるときより明らかにテンションが高く、ボディタッチも多めでした。