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ジブリも宮崎駿も「映画を作り続ける」が、 長年の「課題」は先送りのままなのか?

スタジオジブリ最新作『君たちはどう生きるか』は事前宣伝なしで公開を迎えましたが、蓋を開ければ初日4日間で20億円前後の大ヒットスタートを切りました。気になるのは、ジブリと宮崎駿監督の今後です。これまでも「これが最後」と言いながら新作を作り続けてきましたが、果たしてこれが正真正銘最後の作品になるのでしょうか。

最新作は大ヒットも、「後継者問題」解決は簡単ではない?

公開前に解禁された公式情報はポスター1枚のみという異例の体制となった『君たちはどう生きるか』 (C)2023 Studio Ghibli
公開前に解禁された公式情報はポスター1枚のみという異例の体制となった『君たちはどう生きるか』 (C)2023 Studio Ghibli

 公開前に、1枚のポスター以外、一切の情報を公開しないという異例の状況のなか、宮崎駿監督の10年振りの新作映画『君たちはどう生きるか』がついに公開されました。

 宣伝なしでどれほど集客できるのかに注目が集まっていましたが、ふたを開ければ、宮崎駿のブランド力はいまだ健在で、週末の興行収入ランキングでは、4日間で21億円を超える大ヒットとなり、堂々の1位に輝きました。さすが、日本アニメ界最大の巨人というべきでしょう。

 ギャンブルともいえる、非常にラディカルな挑戦をしたスタジオジブリは、今回は一定の成功は収めたと言えそうですが、気になるのはジブリの今後です。かつての引退宣言を翻しての新作制作、そして、一度は制作部門を解体した後に、こうして映画制作を再始動させたスタジオジブリは、これを最後の作品にするのか、それともこれからも映画制作を続ける道を模索するのでしょうか。

 スタジオジブリの現社長であり、プロデューサーの鈴木敏夫氏は、これまでも「ジブリの今後」についていくつか発言をしています。

 鈴木氏は、ジブリは今後も映画を作り続けると公言しています。2023年6月28日、「金曜ロードショーとジブリ展」開会セレモニーに登壇した際に鈴木氏は、「映画を作り続ける。次の企画も進めている。ジブリの基本である手描きのアニメーションを作ることにこだわっていく」と明確に言っているのです(毎日新聞社「ひとシネマ」/2023年6月28日)。

 つまり、ジブリは倒産して潰れない限りは、まだ映画を作り続けることになるのでしょう。また2017年には、宮崎監督と『君たちはどう生きるか』の次の企画について話し合っていると発言もしています。(オリコンニュース/2017年11月30日)

 この記事では、制作部門を解体したことも宮崎氏が「たったの二年で、心が変わった」ことを明かしているので、引退そのものがもうなかったことになっているものと思われます。そして、今回は情報を秘匿している関係上、宮崎監督自身のインタビューや会見発言などもほとんどありませんが、引退という言葉は今のところ聞こえてきません。今後も宮崎駿監督の新作が作られる可能性はあるということになるでしょう。

 ただ、宮崎監督は今年82歳で、社長の鈴木敏夫氏も8月で75歳になります。中心となる人物の高齢化はジブリの今後を大きく左右するファクターであり、結局のところ、再び「後継者問題」が浮上することになると思われます。

 一度は制作部門を解体したのも、後継者になれるような人材がいないからこその決断だったと思われます。宮崎監督の心変わりで再びジブリが映画制作に戻ってきたことは嬉しいことではありますが、以前にあった問題を先送りにしているという側面も否定できません。

「後継者づくり」を難しくしている根本的要因

 そもそも、スタジオジブリは後継者を作るのが、その出自ゆえに困難な面があります。もともと、『風の谷のナウシカ』の成功を受けて、宮崎監督の次作『天空の城ラピュタ』を作る基盤になるスタジオとして設立された会社なので、宮崎監督ありきのようなところがあり、どうしても同氏のクリエイションがブランドの本質になっています。

 これまでもジブリの名義で別の監督作品は作られてきました。しかし、多くのファンが「ジブリ」と聞いて想像するものとはやや異なる受け止められ方をしてきたのも事実です。

 ジブリというブランドと宮崎駿監督の作家性やセンスのようなものは、分かちがたく結びついているものと考えられます。そうなると、いくらスタジオジブリが存続して別の作家の作品を作っても、「名前だけジブリで中身は別もの」と思われかねないでしょう。

 会社としてのジブリは、割と安定経営している会社で、版権事業でしっかり利益を出しているほか、昨年からジブリパークを開いて、テーマパーク事業もスタートさせています。世代を超えて過去作品を浸透させ続け、世界にもきちんと展開していけば、それなりに安定した経営はできそうな気もします。そのなかで、今後の映画制作をどう位置付けていくのか、気になるところです。

 少なくとも鈴木氏が「作り続ける」と明言している以上、今後もスタジオジブリ名義の映画は公開されることになるでしょう。

※ここから、映画『君たちはどう生きるか』の舞台設定や登場人物などに関する記述や、映画に対する筆者の感想などが含まれますので、ご注意下さい。

【画像】『君たちはどう生きるか』まで39年! 宮崎駿監督が創造してきた、圧巻の作品たち(12枚)

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