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日野日出志の恐怖マンガが描く「真実」 大人になった今こそ見えてくる?

衝撃のデビュー作『蔵六の奇病』には少年時代の実体験が

『蔵六の奇病』第1巻(ゴマブックス/電子書籍版)
『蔵六の奇病』第1巻(ゴマブックス/電子書籍版)

 日野日出志氏が語る生い立ちから、まず引き込まれます。生まれたのは終戦直後の旧「満州国」(現在の中国東北地区)。今はなき幻の国で生まれたことから、自分のアイデンティティーは何かを考えるようになったそうです。

 赤塚不二夫、ちばてつや、古谷三敏といった漫画家たちも旧「満州」出身ですし、映画「男はつらいよ」シリーズで知られる山田洋次監督や作詞家・作家のなかにし礼も旧「満州」からの引き揚げ者です。わずか13年しか存在しなかった「満州国」ですが、後に多くの表現者を生み出していたことが分かります。

 今回のドキュメンタリーの中でもっとも深く掘り下げられるのは、1970年に「少年画報」で発表されたデビュー作『蔵六の奇病』です。昔話風の世界のなかで、絵を描くことが大好きな蔵六の数奇な運命が繰り広げられます。

 蔵六は全身に七色のできものがあり、村人たちから嫌われています。母親は反対するものの、「悪い病気が伝染したらどうするんだ」と村人たちに責められ、蔵六は森の中のボロ屋に隔離されることに。ひとりぼっちになった蔵六は自分の体にある七色のできものの膿を絵の具代わりにして、美しい絵を次々と描くのでした。しかし、蔵六のできものは次第に悪化し、想像を絶する結末が待っています。

 読者だけでなく、マンガ界全体に強烈なインパクトを与えた『蔵六の奇病』ですが、日野日出志氏はインタビューで「自身の実体験がベースになっている」と語っています。子どもの頃から絵を描くことが得意だったものの、家が貧乏で友達が持っているような24色入りのクレヨンを親にねだることができなかったそうです。

 いつか、いろんな色を使って存分に絵を描いてみたい。そんな少年時代の想いが恐怖漫画として結実したのが、『蔵六の奇病』だったのです。

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