映画『惡の華』の井口昇監督「もっとおかしな作品あっていい」…10代の読書体験語る【インタビュー(3)】
実写版『惡の華』を撮った井口昇監督は、『惡の華』の主人公である春日たちと同じ10代の頃はどのように過ごしていたのでしょうか。井口作品に大きな影響を与えた、思春期の頃のユニークすぎる読書体験を語ってもらいました。
団鬼六の官能小説を中学生で読破
実写版『惡の華』の公開を2019年9月27日(金)に控えた井口昇監督。“生きづらさ”をテーマに映画を撮り続けている井口監督は、『惡の華』の主人公である春日たちと同じ10代の頃はどのように過ごしていたのでしょうか。思春期の頃のユニークすぎる読書体験を語ってもらいました。
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——井口監督自身の10代の頃についてお聞きしたいと思います。
井口 『惡の華』の春日くんほどではありませんが、中学生の頃は本が好きでよく読んでいました。ヘルマン・ヘッセの『車輪の下』とか、アルベール・カミュの『異邦人』とか、世界の名作文学をよく読んでいました。日本の作家だと安部公房、筒井康隆、星新一……。活字の世界に浸かっている間は、現実を忘れられる気がしたんです。
——団鬼六の小説も読むようになったそうですね。やはり中学生の頃ですか?
井口 中学生の頃です(笑)。自宅の近くに銭湯があって、よく映画のポスターが貼ってあったんです。『団鬼六 女教師の××』みたいなポスターを見て、僕はホラー映画だと思っていたんです。名前を見ただけで恐怖を感じていました。
中学生になって近くの本屋で、団鬼六の「花と蛇」シリーズ(団鬼六の代表作とされる官能小説:編集部注)が並んでいるのに気づいて、楳図かずおさんや古賀新一さんのホラー漫画につい手を伸ばしたくなる感覚で立ち読みを始めたところ、全身に電流が流れるような衝撃を感じてしまって。その日以来、「花と蛇」シリーズ全6巻をその本屋で立ち読みして読破しました。
——中学生で「花と蛇」シリーズを読破とは、早熟ですね。
井口 それこそ、春日みたいに「中学生で団鬼六の小説を読むなんて、僕はなんて変態なんだろう」と悩んでました(笑)。映画監督になった今でも、「花と蛇」は忘れられないシリーズです。「花と蛇」は何度も映画化されていますが、映画化される度に、「違う! これは僕が見たい『花と蛇』じゃない」と憤慨しているんです。
なので、今回の『惡の華』も、怒る原作ファンがいないか心配です。ファンは自分だけの完成された世界を持っていますから。『花と蛇』はいつかチャンスがあれば、僕も映画化してみたいですね。
——井口監督は永井豪原作のマンガ『おいら女蛮』を実写映画化(2006年)しています。永井豪作品もお好きなんですね。
井口 永井豪作品は、僕の中ではエロスの原点になっています。僕は『イヤハヤ南友』が永井豪作品の中ではいちばん好き。『南友』もいつか映画化したいですね。