『ガンダム』ミライを愛した「カムラン・ブルーム」は漢の手本! 『逆襲のシャア』にも登場
カムランこそ真の漢(おとこ)である

ここからカムランはミライに自分とともに来るよう説得しますが、見かねたスレッガー中尉に割り込まれ、眼鏡を取られた上に小突かれ吹っ飛ばされてしまいます。しかし心配して駆け寄ったミライに対しては「ご婦人の口説きようがまずいという訳さ」と答えており、自分より大柄な軍人であるスレッガーを前にしても、ひるんだ様子はありません。情けない描写もありますが、実のところ精神的にはなかなかの強さを見せています。
その後もパトロール機に乗って戦闘に割り込み中止させる、父親の力を借りて武器の封印を破った件をもみ消そうとするなど、ミライのためにギリギリまで自分ができることをやり切る姿勢を崩しません。これだけ真摯に尽くしながらも、命がけの戦争を生き延びてきたミライとは意識のすれ違いが起きてしまい気持ちが通じなかったのは気の毒な話です。
最後まで誠意を見せようとするカムランは、サイド6を出港するホワイトベースを自家用機で先導するという、命がけの行動に出ます。ミライは拒否しようとしましたが、スレッガー中尉が今度はミライをひっぱたき、カムランがどれだけの覚悟で先導を申し出たのかを訴えたのです。カムランの意志を悟ったミライは申し出を受け入れました。無事に命がけの先導を終えたカムランはミライの無事を祈りながら、ホワイトベースを見送ったのです。
『逆襲のシャア』で再登場したカムランは出世を果たしていたようで、会計監査局の人間として登場。シャアにアクシズが譲渡された会議に居合わせます。シャアがアクシズを使い何かをすると感じ取ったカムランは、ミライの夫であるブライト・ノアにひそかに接触し、核弾頭15発を託したのです。このときカムランは「現行の連邦政府が生き続けたら、終身刑ですね」と語っており、ミライに生きて欲しいがために自分が罪人になっても構わないという強い意志で行動しています。人の妻となった愛する人のためにここまでできるのは、漢(おとこ)のなかの漢と言えるでしょう。
なお、この後の顛末はマンガ『機動戦士ガンダムUC 虹に乗れなかった男』で描写されており、ブライトがある条件を呑むことにより、カムランは無罪となりました。カムランとブライト、同じ女性を愛した男同士の運命もまた、交わり続けていたのです。
(早川清一朗)