『もののけ姫』と「ハンセン病患者」 宮崎駿監督はなにを想い「病者」を描いたのか
風化しつつあるハンセン病の歴史。宮崎駿監督が未来に望むものとは

先ほども述べたように、ハンセン病患者は長く「差別と偏見」に苦しんできました。2001年には、国の隔離政策により人権を侵害されたとして、元患者らが国を訴えるという裁判があり、熊本地裁は国に計18億円の支払いを命じました。
その審理が進められるなかで、元患者らの被害の実態が明らかになっています。1931年には「癩(らい)予防法」が成立し、本人の意思にかかわらず患者を療養所へ強制隔離する策がとられました。隔離のみならず、断種や妊娠中絶の手術を強要されたといいます。
近年では、療養所に暮らす患者らの高齢化などにより「ハンセン病患者が差別と偏見を受けてきたという事実が風化しつつある」という問題が持ちあがっています。宮崎駿監督は前述した「人類遺産世界会議」まで、公の場でハンセン病患者について語ることはありませんでした。しかし元患者からの相談を受け、ハンセン病の歴史を残すために講演への登壇を決めたそうです。
『もののけ姫』の「病者」のなかには、「長」と呼ばれる人物がいます。彼はかなり重症のように見え、寝たきりの状態です。その「長」は「生きることは誠に苦しく辛い。世を呪い、人を呪い、それでも生きたい」とアシタカに語ります。
もちろん、この言葉がそのままハンセン病患者の心を代弁するものであるとはいえないでしょう。しかし宮崎駿監督はどのような想いでこの「長」のセリフを生み出したのか、そのことを考えながら『もののけ姫』を鑑賞すると、今までとは違った視点が生まれるかもしれません。
(LUIS FIELD)


