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なぜ『タイガーマスク』がイタリアで映画化? 「アニメとリアル」で生んだ人気とは

日本のアニメ『タイガーマスク』が、なぜかイタリアで実写映画化決定! 実は日本以上に熱狂したタイガー信者がいっぱいいたのです。

イタリア国民はプロレスを知らなかった!?

『タイガーマスク』1巻(講談社)
『タイガーマスク』1巻(講談社)

 2023年11月にイタリアから、日本マンガ・アニメの傑作『タイガーマスク』(原作:梶原一騎 絵:辻なおき)の実写映画化が決定というニュースが飛び込んできました。イタリアの映画製作会社が制作、原作コミックの出版元である講談社が共同プロデューサーとして加わります。マンガの物語に国際的な要素を加えた、イタリアと日本を舞台にした新しい国際共同製作作品となる予定、とのことです。

 このニュースに、こう思った人も多かったでしょう……「なぜイタリアで!?」。もちろん、これには裏付けがあります。

 イタリアで日本のアニメ『タイガーマスク』が放送されたのは、80年代前半のことでした。タイトルは『タイガーマン』(イタリア語で『Uomo tiger』、直訳で「虎男」)でした。タイトルの変更は、アメコミヒーローに「○○マン」が多い影響だと思われます。

 実は、当時のイタリア国民のほとんどは「プロレス」の存在すら知りませんでした。予備知識がなく始まったアニメ映像はショッキングだったでしょう。ロボットや変身ヒーローと違って、生身の人間が四角いリングで殴って蹴って投げ飛ばして、ときには残虐な反則技で大流血します。

 しかし、タイガーマスクはアクロバティックな必殺技で極悪レスラーに勝利するのです。主人公・伊達直人は貧しい身の上からトップレスラーに這い上がりますが、マスクを取った表の顔は孤児院の子供たちに慕われる優しいお兄さんでした。そんな二面性も、イタリア人の心を打ちます。番組はいくつもの局で何度も再放送され、イタリアに住む人なら誰もが知るヒーローとなったのです。

●「本物のタイガーが!?」

 ただし、ここまではあくまでアニメの世界でした。イタリア国民に第2の衝撃が襲うのは80年代後半です。「Italia.1」というチャンネルで、なんと『ワールドプロレスリング』(テレビ朝日 ※日本より2~3年遅れ)の放送がスタートします。題名は「Superstars of wrestling」で、毎週土曜日21時からというゴールデンタイム放送です。

 番組を見たイタリア国民は仰天します。「プロレスが本当にあったなんて!」「実物のタイガーマンがいる!」。

 リアルレスラー「タイガーマスク」が繰り出す「四次元殺法」は、アニメと融合反応して人気が大爆発します。この頃は、アニメの人気は落ち着いていましたが、タイムラグが短いうちに「実物」が登場したので衝撃度は高かったのだと思われます。

 しかも、アニメにも出ていたアントニオ猪木選手まで実物で登場しますし、また、この時代はハルク・ホーガン、アンドレ・ザ・ジャイアントといった個性的な外国人レスラーもたくさんいた「プロレス黄金期」だったので、イタリアでブームに火が付いたのもうなずけます。

「Superstars of wrestling」の放送は90年代中盤には終了しますが、当時、熱狂したイタリア人にとって最も有名な日本人はアントニオ猪木で、坂口征二、藤波辰巳(現・辰爾)といった人気選手の名前は今でもすぐに挙がるほどだそうです。そしてタイガーマスクは、現実のプロレスと架空アニメの世界で絶大な人気を誇るスーパーヒーローとして、今でもファンが多い、というわけです。

 イタリアでの『タイガーマスク』の実写映画化が、不思議ではない理由がお分かりいただけたでしょうか。映画の配役についてなど、新しい情報は順次公開されるとのことです。ちなみに日本での実写映画版は2013年に放映されていて、主役の「タイガーマスク・伊達直人」はウエンツ瑛士さんが演じていました。

(石原久稔)

【画像】「ありえない」「似てるかも」 賛否あった「伊達直人=ウェンツ瑛士」の実写『タイガーマスク』を見る

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